内山悟志の悠々快適エイジレスライフ

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第8回
おせち料理で残したい日本の食文化

いよいよ今年も残すところあとわずかだが、今年は和食がユネスコ世界文化遺産に登録された記念すべき年だ。なかでも、おせち料理は日本の素晴らしい食文化を継承したものであり、是非とも後世に残したい。

和食がユネスコ世界文化遺産に登録された理由の1つとして、年中行事との密接な関わりを持ち、自然の恵みである「食」を分け合い、食の時間を共にすることで、家族や地域の絆を深めてきたことがあげられている。特におせち料理は、日本人にとって最も重要な年中行事であるお正月の文化・習慣を色濃く反映したものといえる。
「おせち」とは、もともとお節供(おせちく)の略で、年の始めにその年の豊作を祈って食べる料理や武家の祝い膳で、新年を祝う庶民の料理などが混ざり合ってできたものと言われている。
最近では、料亭や百貨店が3万円から5万円の高級おせちを販売しているし、ネット予約もできるため、おせち料理を作るよりも買うという家庭が増えているかもしれない。また、元日からコンビニやスーパーが営業しているので、保存食としておせち料理の役割は薄れているかもしれない。さらに、年末年始休暇を利用して海外旅行をする人が増えたり、核家族化や住宅事情によって年始回りの習慣が薄れたりしたことで、そもそもおせち料理を食べたり、振る舞ったりする機会が減っているともいわれる。
おせち料理は、地域によって内容が異なっていたり、家庭によってさまざまなアレンジがなされたりしている。北海道の氷頭(ひず)なます、滋賀のフナずし、福岡のブリ、長崎のくじらなどは土地の食文化を反映したものだ。また、黒豆はマメに働くように、数の子は子宝に恵まれるように、海老は、ひげが生えて腰が曲がるまで長生きができるようにとの願いが込められている。そして、重箱に詰めるのは、めでたさを「重ねる」という意味で縁起をかついだものだといわれている。お雑煮は武士の習慣の名残とされ、宴会で行われる主君と家臣の盃の応酬、「式三献」の初献がお正月の肴として伝えられたもので、必ずお屠蘇を飲んで雑煮を食べるしきたりになっていたといわれる。こうした人々の営みや願い、土地ごとの食文化、初詣や年始回りといった風習とともに、親から子へ、子から孫へと受け継がれてきたものだ。

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