人生を謳歌する糖尿病生活のススメ

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第8回
糖尿病父さんの、食べるのが大好きなポッチャリ息子・A君の場合

「かわいい」では済まされない子どもの肥満

そのときA君は、まだ10歳。
小学校4年生にして体重は55キロという、おデブ男子だった。
しかし、ご両親に彼が肥満という自覚はなかった。
それどころか、「子どもはぽっちゃりしているぐらいのほうが健康的でかわいい」と思い、「栄養をたっぷり取って、どんどん大きくなってほしい」と願っていた。
じつに危険な思い込みといえる。

A君の父親であるKさんは糖尿病で、牧田医師の患者だ。
自分はきちんと血糖管理をし、節制しているお陰で元気だが、ある日の診察で息子の話をした。
「食事療法もだいぶ慣れてきたんですが、やっぱりご飯とかラーメンとか、好きなだけドカ食いしていたころがすごく懐かしくなることあるんですよ。
特にうちの息子の食べっぷりを見るとね、うらやましくなります。
まだ10歳なのに、ラーメンライス、から揚げ、ギョーザをペロッと食べてしまう。カレーライスなんかも大盛り3杯はいけちゃいます」
Kさんは、食欲旺盛な息子が自慢のようだ。

牧田医師は、心配そうに尋ねた。
「それで、息子さんの体型はどうですか?」
すると、Kさんはこう答えた。
「まあ、結構ぽっちゃりタイプです。55キロぐらいかな。
身長は145cmです。
でもね、うちのカミさんも、息子がペロッと平らげてくれるので、食事の作りがいがあるって喜んでいるんですよ。
ほんと、元気でかわいいやつなんです」

そう語るKさんに、牧田医師は厳しい口調で言った。
「Kさん、その認識は非常に危険ですよ。今すぐお子さんに、ダイエットさせてください。その前に、血糖値の検査もした方がいいですね」

驚くKさんに牧田医師は、子どもの糖尿病が増えていること、その原因のほとんどは肥満にあることを説明し、最後に「息子さんは、ぽっちゃりではなく肥満だと思いますよ」と付け加えた。

Kさんは不服そうだったが、後日A君の血糖値を試しに計ったところ、糖尿病予備軍レベルと判明。 ショックを受けたKさん夫妻は、心を鬼にして、A君のダイエットを開始した。

当初は、かんしゃくを起こして暴れたり、「お腹が空いたよ~」と大泣きしたりしたA君だったが、半年後にはぐんとやせて身軽になり、血糖値もまったく問題ない値に下がった。

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