大人の旅(人生)のはじめ方

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第5回
この年末年始は音楽をテーマに海外で…

日本でお金を出して買えないものはない、とまでいわれる時代になりましたが、いつになっても日本で買えないものがいくつかあります。その一つが「体験」です。海外旅行そのものが、行かなければ決して味わうことのできない「体験」を提供するものであることはいうまでもありません。

今では年に数回海外旅行を楽しまれる方もいて、海外旅行が当たり前という時代になりつつあります。旅行の目的はさまざまですが、回を重ねると、それまでとは趣の違った旅に出てみようと思う方もいるでしょう。

例えばヨーロッパを旅するのであれば、誰でも知っているモーツァルトを旅のテーマに、生まれ育ち活躍した街を訪れる…。
実は、モーツァルトが生まれたザルツブルク、主な活躍の場となったウィーン、代表作「フィガロの結婚」や「ドン・ジョヴァンニ」が大ヒットしたプラハ…この3都市の旧市街は、世界遺産に登録されています。すなわちモーツァルトに最もゆかりのある街を訪れるということは、ヨーロッパの歴史や文化を最も肌に感じることのできる街を訪れることになるのです。

世界中から多くの観光客が訪れる音楽の都ウィーンは、「ハプスブルク家の遺産で食べている」と、よく揶揄(やゆ)されます。確かに世界遺産に登録されているシェーンブルン宮殿などは、まさにハプスブルク家の遺産で、誰もが訪れる観光名所です。
しかし、最もウィーンらしく、ウィーン旅行のよい思い出になる場所の一つは、間違いなくオペラの殿堂ウィーン国立歌劇場です。前身はハプスブルク家の帝立歌劇場で、街の中心にそびえる巨大な建造物の中は豪華絢爛(けんらん)、おしゃれをして集う聴衆が演出する華やいだ雰囲気、そして今も昔も座付きオーケストラとして最高水準の音楽を奏でるウィーン・フィルの演奏…。まさにウィーン・フィルも国立歌劇場もハプスブルク家の遺産そのもので、日本では体験できない瞬間がこの中にあり、ウィーンの魅力が凝縮されているのです。

ウィーン国立歌劇場は「ウィーンらしさ」を満喫できる場所として、シーズン中の9~6月であれば、いつでも訪れることができますが、音楽の都ウィーンには年末年始ならではのとっておきの催しがあります。それが世界70ヶ国以上にテレビ生中継されるウィーン・フィルのニューイヤーコンサートです。

以前は、純粋に年始の特別な音楽会で最高の演奏を楽しみたいという方がほとんどでしたが、ここ数年は世界中が注目する最大・最高の音楽イベントを一度は生で「体験」してみたいという方がむしろ多くなりました。
ただ、残念ながらそのチケットは一般に流通していないため、入手が極めて難しく、しかも旅行代金に匹敵するほど高額です。 それでも一生に一度の体験のために、ライブデスクの案内で会場となるウィーン楽友協会ホールへ足を運ぶ方は絶えることはありません。

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