荒野のエッセイスト(映画編)

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第1回
「SOMEWHERE」と「ブルーバレンタイン」
煙が目にしみる映画

思いこみとは恐ろしいものだ。
「煙が目にしみる」という曲がある。
1930年代に「ロバータ」というミュージカルのために作られ、それから20数年後に「オンリー・ユー」で知られるザ・プラターズがレコーディングをして、1959年の1月に全米No1ヒットとなった名曲だ。

僕はその内容を、恋にやぶれた男(または女)が、「氷雨」に出てくる女よろしく、スナックのカウンターで独り、
「酔ってなんかいないわ、泣いてない
煙草の煙 目にしみただけなの」
と言い訳をしている「哀しい強がりソング」と解釈していたが、改めて歌詞をチェックしてみると、少々違うようだ。

愛に浮かれた主人公の男が、友人たちに「ハートに火がついたら、いつか煙が目にしみる時が来る」と諭されるという内容で、実際に男(または女)は3番の歌詞では失恋して、涙を流し、同じ台詞を口にするという、言わばアメリカンな大河ドラマに仕上がっていたのだ。

この歌を今年の春に公開される2本の映画で聞くことができる。

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