第67回
そっとしておくこと
2016.12.03 [西澤 史子]
悲しみや苦しみの真っ只中にいる人にどう関わっていいのかわからないという方が多いのではないでしょうか。
日本では悲しみや苦しみの真っ只中にいる人に対し、踏み込まず「そっとしておく」ことが思い遣りだとされています。
はたして「そっとしておく」事は思い遣りなのでしょうか。
最近は一昔に比べ、直接誰かと話したり、会ったりする機会が少なくなっています。
ちょっとした連絡や相談はわざわざ会って話すことなく、メールやメッセージ等のオンライン・コミュニケーションで済ませることができるようになりました。だから、一日を振り返ってみるとだれかと対面や電話で話すこと自体が減っています。それに反比例するようにSNSを中心にオンライン・コミュニケーションは途切れることなく、それこそ朝起きてから寝るまで続いています。
ラインでスタンプを送ったり、フェイスブックにいいねをしたり、リツィートしたり。
オンライン・コミュニケーションは既に一つのプラットフォームとしてインフラ化しています。
特に20代以下の世代にとって、スマホとLINEは友人たちとのコミュニケーションツールではなくインフラです。それは、今の40代以上の世代から見るとテレビが友人とのコミュニケーション・コンテンツとして欠かせなかった様に、なくてはならないものになっているのでしょう。
人との対面的な関わりが減り、オンラインという仮想空間でのコミュニケーションが増えた今、声を掛ける、話しかける等のおせっかいな関わりを求めている人は意外と多く、増えてきていると感じています。
特に、深く辛い悲しみの中にいる時、「そっとしていてほしい」「触れないでほしい」と望む人は実は少ないのではないでしょうか。
「心配しているよ」
「何か出来る事があれば言ってね」
「掛ける言葉が見つからないけれど」
人との直接的な関わりが減ってきている時代だからこそ自分に対する思いを言葉にしてくれると心を打たれるのかもしれません。
ハグや頬へのキス等、体を触れさせるコミュニケーションという習慣がない日本では、相手と一定の距離をもって接することがマナーとされてきました。
けれど直接話したり、触れたりするコミュニケーションが減っている時代だからこそ、少しおせっかいなくらいの関わり方が嬉しいと感じる人が増えてきているのではないでしょうか?
もし、周りに深い悲しみや苦しみで落ち込んでいる人がいたら、ひと声だけでも掛けてみて下さい。
自分のことを心配している人がいる、思ってくれる存在を実感することは誰にとっても大きな救いになるでしょう。
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