第15回
春を呼ぶ「菜花」
2012.03.21 [栗本 清]
今年の冬は寒かったですね。東京にも雪が降り、わずかに積もった雪で交通機関が乱れ、大変な一日もありましたね。
しかし三月も下旬になり、桜のつぼみもほころび、気持ちの良い季節になりました。
春野菜のシーズンを迎え、どの野菜で何を作ろうか考えるのが楽しみです。料理人としてはワクワクする季節なんです。
さて今回は、春野菜の「菜花」をご紹介いたします。
皆さんがご存じなのは「菜の花」ですよね。僕が紹介するのは「菜花」なんです。
「菜花」と「菜の花」の違いはちょっとしたことなんですが、菜花は、菜の花の葉の部分のみを食すために品種改良されたものです。花の部分がなく、葉っぱだけなんです。
在来の日本種は江戸時代には油を精製するのに用いられ、主流種として広く栽培されていましたが、明治時代に入ると西洋種の菜種が渡来してきて、現在の主流種となったそうです。
菜花はアブラナ科ですが、アブラナ科に多く含まれるイソチオシアネート(アリルソチオシアネート)を菜花に期待するなら、加熱は避けるべきでしょう。しかし菜花はえぐ味が強いので、おひたしや油炒めなど、火を通した方がおいしく食べられます。
イソチオシアネートは、がん細胞の発生を抑え、血液をさらさらにして血栓を予防する働きがあり、大根おろしと同様、糖尿病や高血圧の改善が期待できます。
菜花は他にもビタミンA、B1、B2、C、E、カロチン、カルシウム、鉄分、葉酸、食物繊維など多くの栄養があり、また苦味成分はポリフェノールです。これらが総合的に働き、血の巡りを良くすることで、免疫力が高くなったり、体内機能が調整されたりするのです。
特に、菜花に含まれるビタミンCはほうれん草の約4倍といわれています。
このように、ビタミンCや食物繊維などが豊富に含まれているため、皮膚や粘膜の抵抗力を高め、風邪予防、美肌効果、便秘予防などに効果があります。また、冷え性の改善や、精神疲労、肉体疲労の回復などにも効果があるとされています。
菜花を選ぶときは、葉や茎が鮮やかな緑色をしていて、茎の切り口がみずみずしいものを選ぶようにしましょう。
では、次ページで菜花を使った料理を紹介します!
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