第21回
イタリア修行
2012.09.18 [栗本 清]
僕の連載も残すところ、あと2回になりました。
残りの2回は、15年前に僕がイタリアで一年半、料理の勉強をしたときの経験を話したいと思います。
15年も前のことなので、現在のイタリア事情とは多少違うと思いますが、僕が料理以外で学んだことは、あまり変わってないと思うので、少しお付き合いください。
僕がイタリアに修行に出たのは、伝説のイタリアンと呼ばれていた「バスタパスタ」で2番の料理人(シェフの次)になったときのこと。シェフになるためにはイタリアでの勉強が必要と思い、26歳のとき、何のコネもないまま、
「Buon giorno(おはようございます、こんにちは)」
「Buona sera(こんばんは)」
「Vorrei lavorare presso a vostro ristrante con la residenza.(住み込みで働かせてください)」
といった簡単なイタリア語だけを頭に叩き込み、片道の航空券とパスポートを握り締め、旅立ちました。かっこ良く言うと「バックパッカー」ですね。
もちろん2つ星以上のレストランで働くつもりで行ったので、少しは目星をつけて行きましたが。
最初に行ったのは、北イタリアのピエモンテ州。トリノから電車で1時間半ほど行ったネイベという田舎町で、3ヵ月間働きました。
その後、ローマで仕事先が決まっていたのですが、僕がローマに入る2~3日前に同店が諸事情で1ヶ月ほど営業できなくなったので、仕方なくローマで職探しました。何件電話をしたか忘れましたが、かなりのお店に電話をしました。
やっと決まったのが、中央イタリアのお店。州都はフィレンツェのトスカーナ州。
美しい田園風景と丘陵地帯が広がり、気候は比較的温暖なところです。
トスカーナに着いたのは6月。
トスカーナのおもな産業は農業で、特にワイン、オリーブ、小麦が有名です。
イタリア料理には欠かせないものばかりですよね。
皆さんもご存じのワイン、キャンティやスーペル・トスカーナといった名品を生産しており、世界屈指の名醸地でもあります。
やっと見つかったお店は、当時は1つ星(現在は2つ星)レストランの「Ristorante Arnolfo(リストランテ・アルノルフォ)」でした。
シエナ近辺ではかなりレベルの高いレストランで、そうそう頻繁に行ける値段ではないお店です。
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