第13回
日本語教育の現場リポートⅡボランティア 千田茂さんに聞く(後編)
2013.02.26 [村上 充]
前回は、日本語ボランティアとして16年に及ぶ活動歴をお持ちの千田 茂さんに、日本語教育との出会い、そして、ボランティアでの活動内容などについて、お聞きしました。今回は、ボランティアに参加してきた千田さんならではの率直な意見や考えについて、お聞きします。
――1997年に初めてボランティアに参加した時、そこに集まっていた日本人ボランティアは、どんな顔ぶれでしたか?
とにかく、多士済々な面々が集まっていることに驚きました。職場では出会えないタイプの人もいて、そういう人たちと協力しながら、日本語教室を運営していくわけです。戸惑いとおもしろさがあり、新鮮でしたね。さまざまなタイプの参加者の中心となっているのが、主婦と思しき層、そして、定年後の60代以上の層、という二つです。そこに、国際交流に関心のある大学生や日本語教師の養成講座に通っている若者たち、それに私と同じように、他に職業を持ちながら日本語教育に興味を持って入ってきた人なども交じっています。
――子育てが落ち着いた主婦の方たちと、定年後、もしくは、定年退職を控えた年配の方たちが中心となる構成は、日本語ボランティア教室では一般的ですね。
そうですね。そして、集まってきた人たちの経歴や経験、能力など、一人ひとり、とてもユニークなんです。年配の男性の中には、海外駐在の経験者や仕事で外国人と接してきた方が多いですね。元気な主婦の方たちも多くいらっしゃいます。
立ち上げ時の日本人ボランティアは30人くらいでしたが、外国人にきちんとした形で日本語を教えられるノウハウを持っている人は、思っていたほど多くありませんでした。中には、「日本人だから日本語は教えられるだろう」と気軽に考えていたような人もいました。例えば、日本語が初級レベルの外国人には、基本的な表現や語彙(ごい)を使ったり、文法を整理して説明したり、できるだけシンプルな文にしたり、といった教え方のコツがあります。でも、日本語教室で、外国人と話している声が、耳に入ってくるたびに、「ああ、初級の学習者に、いきなりそういう言葉を使っても、混乱するばかりなのに……」などと思うことが、度々ありました。そこで、日本語を体系的に学びたいという外国人は、日本語教育のノウハウを持った人や経験者が担当し、日本人とのおしゃべりを楽しみたいという外国人には、ノウハウ・経験のあまり無い人が当たることにしてはと、私を含め何人かのボランティアが提案したんです。
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