第8回
エイジング(モノの経年変化を楽しむ)
2012.07.17 [星野 正紀]
エイジング【aging】はいろいろな角度で使われる言葉ですが、今回は「熟成させること」の意味で、時間の経過によってつくり出される「喜び」についてふれていきます。
舞台装飾やテーマパークなどで、新しい建造物でありながら歴史を感じさせる(古く見せる)美術手法をエイジングと言うことがあります。これは、ストーリーを作るのに欠かせない演出のひとつです。人は長く世の中に存在するものに敬意を表します。ファッションにおいて衣類などにヤブレやヨゴレを意図的に創作しているものが流行っているのもそのひとつです。
さて、今回のテーマであるエイジングの意味は、時間の経過とともに作り出される「色ヤケ」「キズ」「ヨゴレ」などを指し、そのモノの変化の風合いを楽しもうという事です。
モノの販売にあたり、エイジングを謳った商品でも、一般的に購入したばかりのモノは同時期に生産されたものと同じ顔をもっていると思います。やがて、それぞれの購入者のところで異なる時間の過ごし方(使われ方)をし、そのモノの個性が生れてくるのです。言わば、モノのツカレが個性となり材質劣化そのものが「存在してきた証」になるのです。
このように考えると店頭で販売されている状態では、それらはまだ未完成と言っても良いかもしれません。最後の味付けは、購入者(使用者)に委ねられているということになります。そのモノを愛用する時間を重ねるたびに生まれた個性が「味」となるのです。
この「エイジング」を楽しむために参考となる購入基準をご紹介致します。
まず1つ目は、商品の「必要性」です。2つ目は「デザイン」が自分の趣味にあったものであるか、なるべく妥協はせずに色、形を選ぶことです。3つ目に、「素材」。この「素材」で長い時間を共有出来るか否かが決まります。またその素材の経年における表情の変化の仕方にも注意しなければなりません。4つ目は、「価格」です。「デザイン」や「素材」により値段も変わりますが、安いものよりは高価なものほど、その期待感は大きくなります。
そしてこれに加え、重要な要素として、「手で触れるモノ」です。それは、置物(装飾品)などよりも「道具的なもの」のほうが好ましいということです。道具としての働きが「モノのツカレ」を生じさせ、同時に手で触れる道具には使用者の気持ちが入るからです。
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