私が見つけたライフワーク(3)

バックナンバー

第6回
カンボジアを救う「天然はちみつ」

今年はじめ、カンボジア産天然はちみつのサンプルを持って、大手養蜂(ようほう)業者さんを訪ねた時のことです。さらさらとしたはちみつを見て「糖度がうすいと発酵しますよ」と言いながらサンプルを試食した社長さんは、その場で日本への輸入に協力することを約束してくださいました。

アジアオオミツバチ

そのはちみつとは、カンボジアの森林に自生する地蜂(じばち)「アジアオオミツバチ」の巣から採集されたはちみつで、養蜂ではない天然の百花蜜(ひゃっかみつ)です。5月、ハチミツの採取に立ち会いました。
オオミツバチは、名前の通りミツバチの仲間では最大。生息するのは、タイやベトナムの国境近くに広がる森林地帯です。高さ20メートルほどの木の枝に、1メートルほどの大きさの巣板を作ります。

はちみつを採取するために
木に登っているところ

村人は、クロマーと呼ばれる現地のスカーフを頭にくるっとまいただけの軽装で、するすると木を登り、用意した木の枝で巣を燻(いぶ)して蜂を追い出し、蜜のたっぷりはいった巣を一部だけ切り取ります。
こうした方法で採取されるオオミツバチのハチミツは、農薬や化学薬品が一切使われていない自然そのもの。カンボジア人の間では、古くから栄養価の高い食べ物として珍重されてきたものです。病気になったこどもに食べさせたり、健康のために毎日スプーン一杯づつ食べたり、お酒やハーブ類と混ぜて薬用酒として飲んだり。森の香りを含んだ深い味わいは、私たち日本人も魅了されるものがあります。
野生のオオミツバチは森林保全のバロメーターであり、村人たちにとっては貴重な副収入源。ARUNは、投資を通じて、この貴重な資源を持続的に生かした事業の発展と、天然ハチミツのナショナルブランド化をお手伝いしています。

生産者組合のハニーハンター
生産者組合のメンバー達と

カンボジア全国には600人を超えるハニーハンターたちがいて、生産者組合を作っています。貴重な天然資源である野生のはちみつを持続的に採集する方法を広めつつ、安定的な生産と、品質向上に努めています。
調査によると、はちみつの採取は村の中でも貧困層の人が行っている場合が多いようです。危険を伴い、季節変動も激しいなどの理由によるのかもしれません。ただ、幸い組合加入者の収入は全体で30%ほど上がっているとのことで、生産者組合の活動は村人の生計向上に役立っているようです。

コメント