第9回
ふつうに見られる日本の野生ラン
2012.06.12 [西原 升麻]
ランといえば人気が高く、高価な花のイメージがあります。洋ランは大きく華麗な花が多いので、一般の人にも好まれ、長期間花を楽しめる鉢物が多く出回っています。
一方、洋ランに対して東洋ランがあります。東洋ランといっても、日本を含めた東洋の野生ランすべてを指しているのではありません。園芸の対象として価値のある一部のラン、すなわちシュンラン、カンラン、フウラン、セッコクなど、種類を限定して東洋ランと呼んでいます。
ただ、日本には東洋ラン以外にも自生しているランはあります。以前紹介したネジバナを始め、ウチョウラン、イワチドリ、エビネ、クマガイソウ、サギソウなどが山野草としてのランです。
しかし、これらのランはやはり人気があり、盗掘にあったり環境の変化があったりして激減し、野山を歩いていてもめったにお目にかかれません。
植物に関するレッドデータブック(絶滅危惧(きぐ)種のリスト)によると、ランはトップにランクされています。全危惧種の約20%を占めていて、野生ランの70%は絶滅の危機にひんしているともいわれます。
ちなみに、昭和50年代後半に出版された植物図鑑の解説に次のような前書きが載っています。
「ランはじつに種類が多いくせに、個体数が少ないので、野外で出合うチャンスはそう多くはありません。それでこの本には、その中の比較的ふつうなものと、2,3の有名な種類だけをとりあげ、多くを割愛しました。…」
もともと野生のランは自然の中では見つけることが難しかったのに、人気が高かったのが災いしたのでしょう。
- ギンランは湿った林の中に咲いていました
- 銀といっても真っ白な花のギンランです
しかし、幸いに今でも自然の中で生き抜いて、比較的楽に見られる野生ランもあります。
まずは、「ギンラン(銀蘭)」。いつも林の中でひっそりと咲いているのを見かけます。ひっそりというのは、群生して咲いているのを見たことがないので、そう感じました。また、いつ見ても開いた花を見たことがないので、そう思うのかもしれません。
いつも、「時期が早かったか?」と思っていたのですが、調べてみると、咲ききらない、奥ゆかしい性質を持っているのだそうです。良くて半開きなので、咲いている状態を拝めないのは致し方ないというところでしょうか。
でも、独特なうつむき姿は、かえって日本的で味がある気がします。ただ、開ききらないのはギンランの戦略だとは思いますが、虫が入りにくく子孫繁栄に不利にならないのか気になります。花と話せるのであれば、どうして咲ききらないのかぜひ聞いてみたいものです。
咲ききらないギンラン、咲いてもこれくらいです
ギンランは「銀蘭」と書くので、銀とくれば金が思い浮かびます。実際にギンランに対応して「キンラン(金蘭)」というランがあります。こちらも性格は似ていますが、花の色が黄色で目立つため、盗掘が多かったのか、こちらはレッドデータブックに載っていて、ギンランより見かけるのが難しいようです。私もまだ自生のものは見ていません。見つけられたらラッキーですね。
コメント