第16回
カタクリは堪え忍ぶ花だった
2015.03.30 [西原 升麻]
カタクリはこんな花です
カタクリはフクジュソウと並び早春を代表する花の一つです。フクジュソウは暖かさを感じさせる春の使者、カタクリは色も優しく春の女神と言う感じですね。
カタクリとは考えて見れば変な名前です。漢字では普通、片栗と書き、葉が栗の子葉に似ているからとか、古名の堅香子(カタカゴ)から転じたなどの説がありますが、他の説も含め本当のところははっきりしていません。
江戸時代の本に「かたくり」は奥州南部の方言で江戸でも「かたくり」と呼ぶ、とあります。調べてみると、ある資料を引用していました。それは採薬使記と言う資料で、徳川吉宗の時代に幕府が各地の薬に関する調査をまとめたものです。奥州の調査についての項目から引用していたので、奥州の「かたくり」と言う呼び方が江戸でも標準名になったのかもしれません。
うつむいて反りかえるカタクリ
名前のことはさておき、かれんに咲くカタクリの最大の特徴はうつむきかげんに反りかえって咲く姿です。そう言えば同じユリ科のクルマユリやコオニユリなどいくつかは下向きで反りかえるものがあります。ユリ科以外でも外国の物ならシクラメン、日本でもナスの仲間やフウロソウの中に反りかえるものがあるので、案外反りかえる花ってあるのかもしれませんね。
ユリでも(コオニユリ)反りかえるものが
反り返りの代表シクラメン
ナスの仲間も反りかえります
でも、なんで反り返るのでしょう? なるほどと思った説に、反りかえることでオシベが前に出て花粉を昆虫につけやすくなるというものがあります。花粉媒介はマルハナバチやギフチョウなどの昆虫だと言います。確かに蝶ならこの花びらに止まれば、奥にある蜜を吸えて体には花粉が一杯つきそうな気がします。
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