第6回
介護や生前贈与は遺産分割に反映される
2012.02.07 [灰谷 健司]
遺産分割において、亡くなった人の介護をした法定相続人は、その分多くもらえることができて、亡くなった人から多額の生前贈与を受けた法定相続人は、もらえる額が少なくなる―。みなさんはこのことをご存知でしたか?そしてその理由をお分かりでしょうか?それは介護が寄与分として、生前贈与が特別受益として扱われ、遺産分割に反映されるからです。今回はこの寄与分と特別受益がテーマです。寄与分と特別受益は、相続の遺産分割の際に揉める一因になることがよくあるので注意が必要です。
寄与分は、法定相続人全員の合意が必要。
介護した息子の嫁には寄与分は認められない。
寄与分とは、法定相続人が、亡くなった人に対して介護をした場合のほか、事業を手伝ったり、経済的な援助をしたり、財産を維持したり増やすことに特別な貢献をした場合に認められるもので、法定相続人は、その貢献度合いに応じて法定相続分とは別に財産をもらうことができます。寄与分が認められた法定相続人は、遺産のうち、まずその分を確保できます。寄与分を差し引いた遺産が法定相続分の割合で分けられます。
ただし、寄与分は法定相続人全員の合意が必要になります。その過程で揉めることが多いのですが、合意に至らなければ家庭裁判所で決めてもらうことになります。しかし、介護などがすべて寄与分として認められるわけではなく、認められたとしても、その金額が納得できないというケースも出てきます。法律で「介護1日あたりいくら」とは決められていないのです。
また、寄与分は法定相続人にしか認められないので、亡くなった人の息子の嫁が介護した場合は認められませんから、嫁がもらえるようにするのであれば遺言を活用するといいでしょう。
生前に多額の贈与を受けている場合、
相続ではその分が差し引かれる。
特別受益とは、法定相続人が、亡くなった人から結婚や生活のために多額の資金援助を受けたり、遺言で贈与(遺贈)を受けることをいいます。
特別受益がある法定相続人は、相続でもらう金額がその分差し引かれます。その場合の分け方は下表に示しました。なお、生前に贈与された不動産や株式といった財産は贈与を受けた時ではなく、相続があった時の時価で評価されます。
ただ、生前贈与がすべて特別受益になるというわけではありません。何が特別受益になるかは、金額や資産・生活の実態を見て判断されます。また、すべての相続人について、誰がいつどれだけ贈与を受けたかを調べることはできません。そのため、贈与のときは問題にならなくても、相続のときにその生前贈与の扱いをめぐって揉めることがよくあります。
そこで、多額の生前贈与の際には、相続における遺産分割についても十分考えることが必要です。遺言を活用するのもいいでしょう。遺言では特別受益に配慮した上で、財産を配分したり、特別受益をないものとして財産を分けたりするように指定することができます。遺言に生前贈与をどう扱うかが書かれていれば、残された法定相続人は納得しやすいでしょう。
【図表】特別受益がある場合の分け方
なお、本文は特定の商品などの勧誘を目的とするものではなく、
文中の意見にあたる部分は筆者の見解であり、三菱UFJ信託銀行を代表するものではありません。
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