実例で学ぶ事業承継のポイント

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第9回
「家族会議」──信頼できる第三者を入れて始めよう

第5回「孫に事業を継がせたい(前編)」第6回「孫に事業を継がせたい(後編)」で、「家族会議」の威力について、実例を基に説明を行いました。
この「家族会議」について、もう少し詳しくお話したいと思います。

なぜ、わざわざ家族間で「会議」が必要なのか?

父親と長男が同居、あるいは同じ敷地内、もしくは近所に住んでいるといったことは、中小企業オーナーでなくてもよくある話です。
最近は「1.5 世帯住宅」という形態も注目されています。これは、単に2つの家がつながっているのではなく、寝室などのプライベートスペースは分離させるが、居間などを共有して、家族間のコミュニケーションを維持しようというものです。

オーナーと長男が同じ会社に働いているということは、同じ居間にいるのと同じです。しかし、いつだって話をする機会があるはずなのに、意外にもコミュニケーションが取れていなかったりする場合が多いと感じています。
「コミュニケーションが取れていない」というと語弊があるかもしれません。もう少し詳しく言えば、日々の仕事の事に関しては非常によく意思疎通が行われているのに、中長期的な話ができていないということです。

ではどうして、事業承継や相続対策というような大事な話ができないのでしょうか?
まずは、「目の前の仕事をこなすので精一杯であること」が大きな理由といえます。長男からすれば、「親の死」という縁起でもない事柄が前提にあるということで話題にしにくい面もあります。また、親子であっても、2人きりで食事をするのは気恥ずかしいという声もよく聞きます。この状況を打開するのは、なかなか大変なものです。

2人で会話をさせない

我々コンサルタントは、このような状況であることを知ると、すぐに「家族会議」の開催を提案します。そんなに大げさなものではありません。私と、オーナーと長男の3人だけの場を作るのです。
このとき、コツがあります。それは「最初は2人で会話をさせない」というものです。

まずは、私とオーナーが話をし、その内容を長男に横で聞いてもらいます。ただ聞いてもらうのです。
そして次に、その話題に対して長男はどう思うかを私が問いかけて、長男は私に答えてもらいます。それを今度はオーナーが横で聞いているのです。
この形態は、「第三者に自分の意見を言っている」という状況になるので、冷静に話せますし、また聞く側も冷静に聞くことができるのです。
とても簡単なことですが、これを親子2人だけでやろうとしても、お互い恥ずかしがったり、すぐに感情的になってしまったりして、なかなかうまくいかないのです。

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