第1回
なぜ、エイジレスライフ・アナリストとなったのか(その1)
2011.04.05 [内山 悟志]
ITアナリストからの転身
筆者は、IT業界の産業アナリストとして21年間、目まぐるしく変動するこの業界の市場や技術を調査分析してきた。IT業界の企業や、情報システムを活用するさまざまな業界の企業に対して中立な立場から、客観的なデータや調査分析をもとにアドバイスを提供することを生業としてきたわけだ。筆者がアナリストになった1980年代後半の頃は、まだITという言葉すらなく、この業界はコンピュータ産業や情報システム・サービス産業などと呼ばれていた。
IT業界は、インターネット、パソコン、OSなど、あらゆる分野で新技術の台頭や技術革新が著しい。また、業界標準や主流製品の移り変わりが激しいという特徴がある。企業の情報システムの構築には、多様な技術や製品を組み合わせる必要があり、その選択が非常に難しい。また、技術規格や契約に関する制度も未整備な部分が多く、注文住宅のように描いた設計図の通りの家が建築されるというわけにはいかない。そのため、買う側が確かな知識と鑑識眼を持たないと、売る側のIT業界の宣伝文句やマスコミの扇動に踊らされて、誤った選択をしてしまい、多大な費用を無駄にすることも珍しくない。こうした点でIT業界は未成熟な業界であると言わざるを得ない。
IT業界がアナリストを求める背景にはこの未成熟さがあり、筆者が第一線で活動してこられたのは、常に買う側・利用する側の立場から業界を見つめ、時には鋭く業界を斬ることで水先案内人の役割を果たしてきたからではないかと思う。
一方、エイジレスライフに目を向けるとIT業界と同様の未成熟さが散見される。高齢社会に目を付けたビジネスが玉石混交に台頭しており、社会インフラや法制度も未整備な状況である。このままでは買う側・使う側の人々が安心快適なエイジレスライフをおくることが困難といわざるを得ない。
二十余年経って気がついてみたら最前線にいるアナリストとしてはIT業界で最古参の存在になっていた。エイジレスライフ・アナリストもこれから20年かけて真剣に取り組めば、必ずエイジレスライフをおくる人々の役に立つ仕事ができると信じて取り組みたい。
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