第52回
脳を活性化させる読書法
2013.07.09 [内山 悟志]
アイデア創出に有効なパラレル読書術
もう1つ筆者が実践している読書法を紹介しよう。これは特に、新しいアイデアを発想したいという時に有効な手法で、筆者はこれをパラレル読書術と呼んでいる。その方法はいたって単純で、1冊ずつ読破していくのではなく、複数の本を並行して読んでいくというものだ(図1)。そうすることで、1冊の本からは決して生まれることのない化学反応が起きる。脳の中で複数の本のエッセンスが組み合わされ、オリジナルのアイデアや理論が産み出されることもあるのだ。
図1.パラレル読書術のイメージ(写真は現在読みかけの本)
これは実は、ある理論に基づいた方法である。1940年に原著の初版が出された不朽の名著である「アイデアのつくり方」(ジェームス・W・ヤング著、阪急コミュニケーションズ)では、アイデアは、「材料収集」→「材料の消化」→「孵化(ふか)」→「誕生」→「検証と発展」という過程で作られると述べている。この中で、「孵化」の部分が特徴的だ。つまり、あれこれと情報を加工して思考を巡らした後で、問題を放り出し、できるだけ問題を心の外に追い出してしまうのである。そして、十分に孵化した時点で、「ふとした瞬間」にあたるアイデアの誕生の時が自然にやってくるのだという。なるほど、確かに問題にぶち当たって、考えに考え抜いている時には、ちっとも良いアイデアが浮かばないのに、その問題を忘れた頃、何気ない瞬間に不意に「わかった! これだ!」ということを何度も経験している。
これを読書に当てはめて、書籍Aを途中まで読み、書籍Bを読む。また、その途中で一旦放り出して書籍Cを読むというのがパラレル読書術だ。書籍Cを読んでいる時は、書籍AやBのことは忘れているわけだが、実際には意識のどこかにはAやBの内容が刻まれている。無意識のうちに複数の書籍の内容が融合されたり、互いの内容に対する理解が促進されたりする。1つの事象が多面的に見えてくることもある。類似した分野の書籍でも構わないが、異なる分野の書籍を組み合わせても面白い。
書籍は非常に多くの示唆を与えてくれる。脳を活性化しつつ、知識と教養の幅を広げることで、話題も豊富になりチャレンジ精神も掻き立てられる。心豊かなエイジレスライフに向けて、自分に合った読書法を見つけてみてはどうだろうか。
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