第12回
マルチハビテーションという暮らし方
2014.02.24 [内山 悟志]
まずは比較的少数派ではあるが仕事を持ちながら都市部と国内地方部に居を構える図1の①に該当するパターンを考えてみよう。筆者の仕事の先輩のAさんは、都内の企業に勤務するビジネスマンであるが、子供が成人して独立したことを機に山梨県の清里にセカンドハウスを構えた。月曜日から金曜日までは都心のマンションから通勤し、金曜日の夕方には奥様の待つ清里に帰って週末を過ごし、月曜日の朝にまた都心の会社に向かうという生活をおくっている。また、以前の仕事仲間のBさんは、会社勤めを辞め、フリーランスでライターと翻訳の仕事をしているが、仕事の打ち合わせや取材の時だけ東京に戻り、普段は和歌山県の山奥の古民家を借りて住んでいる。Bさんの場合は、通勤の必要もなく執筆や翻訳のようなデスクワークは基本的にどこにいてもできるし、最近はインターネットで原稿の送受信もできるし、Skypeなどを使って遠隔会議もできるので全く不自由を感じないという。
極めて少数派だが図1の②に該当する仕事を持ちつつ都市部と海外をまたにかける猛者もいる。以前の取引先のCさんは、会社を辞めてタイに拠点を移し、日本とタイの懸け橋となるような事業を立ち上げている。家族は日本に残しているため、商談で帰国する時に家族の住む自宅に帰るという暮らしぶりだ。
一方、リタイア後は仕事に縛られるという制約がないため、一気に選択肢が広がる。図1の④に該当する海外もその1つだ。物価や地価の安いマレーシア、タイ、インドネシアなどの東南アジアは、移住やロングステイに加えてマルチハビテーションの1つの拠点としても人気が高い。
最も多いのが図1の③に該当する都市部と国内地方部のマルチハビテーションである。東京の夏の暑さに嫌気がさした友人のDさんは、会社の相談役を退いたのを機に今まさに北海道の居住先を探している。数年前から、2週間から1か月間道内のホテルを転々としながら気に入った街に目星をつけ、今年の夏は試しに釧路の賃貸マンションを1か月借りて住むという。何年かこのような仮のマルチハビテーションを試行して、最終的には夏場の永住先を見つけたいとのことだ。
このように、自分の周り人々のライフスタイルを見ていても、さまざまな暮らし方が考えられるし、どれも魅力的に見えてくる。
将来は、夏の暑さと冬の寒さを避けて北海道と沖縄の地方・地方のマルチハビテーションというのも憧れのライフスタイルではないだろうか。
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