内山悟志の悠々快適エイジレスライフ

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第19回
オリーブの島、小豆島を訪ねる

さて、次に向かったのは昼食も兼ねて、素麺の工場見学、箸分け体験、食事ができる「なかぶ庵」だ。素麺を乾かす前の段階で、長い箸を使って、ひっついた麺をはなす工程があるが、それを実際にやってみるのが箸分け体験だ。
小豆島では、400年ほど前から手延べ素麺が作られているとのことだ。小豆島は、麺の熟成や乾燥に適した気候風土に恵まれていただけでなく、瀬戸内海で採れる天然塩、讃岐平野で作られる小麦粉、島で作られるごま油、良質な清水など、素麺づくりに欠かせない原料の調達が容易であることや、農閑期の農家の副業として適しており、家族の労力だけで生産できることから素麺づくりが盛んにおこなわれるようになったと言われている。
素麺づくりの現場を見学し、実際に箸分けを体験したあとに頂く素麺は格別だ。

このあと、ヤマヒサの醤油蔵を見学させてもらった。ヤマヒサは昭和7年から醤油製造を始め、現在は四代目だが、今でも直径・高さともに2メートル以上の大杉樽を使って製造している。なお、現在、大杉樽は国内に3000~4000本残っていると言われるが、そのうち小豆島には1000本以上の樽が残っており、狭い地域にこれだけ醤油蔵が密集している地域も他にないそうだ。ヤマヒサはそのうち120本を保有しており、醤油蔵は国の有形文化財に指定されている。

小豆島といえばオリーブを外すことはできないだろうと思い、このあとオリーブ園や町立のオリーブ公園などを回った。小豆島のオリーブは平成20年に植栽100周年を迎えたとのことで、オリーブ発祥の地の石碑がオリーブ公園に建てられている。オリーブは、5月下旬に小さな白い花をつけ、6月に小さな実がなり、10月くらいに手摘みで収穫を行うそうだ。収穫時期には、搾油をするところを見学できるそうだが、残念ながら今回は花をつける前のオリーブの木を見学するにとどまった。

さて、旅を終えて数週間したあとに、思いがけないサプライズがあった。素麺の箸分け体験をした「なかぶ庵」から小包が届いたのだ。
開けてみると箸分け体験の修了証書と記念品の素麺が一束入っていた。
確かに、体験をした際に住所などを記入したが「後で記念品を送りますから」なんてことは一切言っていなかったので、思いもよらない喜びだった。
この何気ない心遣いが、温暖でのんびりした小豆島の風土を思い出させてくれた。

こうして旅を思い出しながら紀行文を書いていると、瀬戸内の美しい海と島々の景色が浮かんでくる。これも旅の素晴らしさの1つではないだろうか。もう少し年を重ねたら、今度はもう少しゆっくりと島々を巡ってみたいと思う。

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