大震災特別寄稿

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第6回
フロムナウ取材陣が感じた震災41日後の“福島”〜その2〜

満開の桜の中、何kmも先から届く悪臭……

最初に向かったのは、福島県北東部に位置する相馬市。福島市から伊達市を抜けて、国道135号線(中村街道)で霊山(りょうぜん)、そして相馬市方面へと車を走らせる。福島市内を一歩離れると、美しい里山の風景に変わる。街道沿いに植えられた桜、ソメイヨシノは五分~八分咲き。うっとりするような気持ちの良い景色が続いていた。のどかな山村の風景を見て、フロムナウ復興プロジェクトチームの一員である庭師の田中造景氏も、「すばらしい里山です。人の手が程よく入ることで、日本人はこのように自然と共存共栄してしたわけです」とつぶやいた。季節も機能もまさにドライブ日和。震災前であればドライブを心底楽しめたのだろう。しかし、今回ばかりは、この光景から自然との調和を無視することの罪深さ、人のエゴで物事を考えることの愚かさについて考えさせられてしまう我々がいた。

出発しておよそ40分。取材陣の前に、津波被害の“兆し”が現れる。しかも、目に見えない形で……。最初に気づいたのは、相馬港まで直線距離で10kmは離れている相馬市の郊外。休憩のため立ち寄ったコンビニエンスストアの駐車場。車から降りると、何ともいえない“臭い”に襲われた。魚が腐ったような……、顔をしかめたくなるような臭いである。福島だけに限らないが、東北の海岸沿いというと、海産物の加工工場など多数が立ち並んでいる。こうした工場が津波の被害を受け、保管していた商品や加工前の魚介類が流出したと聞いた。おそらく食品が回収されることなく腐り、悪臭となって海からの風に乗って山間の方へと漂ってきているのだろう。

正直に打ち明けると、この臭いに面くらい、不安な気持ちに包まれてしまった。なぜならこの場所に来るまで、被災地が独特の臭いが立ちこめているなど、考えていなかったからだ。津波の被害状況については、テレビや新聞、雑誌の報道を通じて見聞きすることはできる。しかし、このように現地を訪れてみて初めて気づくことも多い。地元住民のことを思うと被災地へと出かけることを遠慮してしまうが、時間を取れる方、特に若者には、ボランティア活動の一環で現地を訪れてもらいたいと思う。もしくは社員研修の一環として、ボランティア活動に取り組むのでも構わない。率先して理由を作り、被災地の現状を自分の目と耳で体験する。これは海外へ行って見聞を深めることよりも、自分たちの生活や意識を変えるキッカケになるはずである。

そんな思いを巡らせながら車はさらに進み、相馬市の中心部へと入った。まず案内されたのは、国指定重要無形民俗文化財に指定されている「相馬野馬追」で、出陣式が行われる「相馬中村神社」がある相馬中村城跡、馬陵公園だ。取材陣が訪れた時期は、公園内にある数百本の桜が咲き誇り、春満開といった様相だった。この場所は海岸からは距離があるため、周辺は見えるような被害もないのである。もちろん、お花見というムードは全くなかったが、心休まる光景を求めて数多くの住人が訪れていた。喜ばしいことに、1000年を超える歴史のあるという伝統行事の相馬野馬追は、規模を縮小されたものの開催された。今年は鎮魂という思いを込め、また新たな一歩を踏み出す節目となったのではないだろうか。

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