第10回
シニア劇団「すずしろ」、ニューヨーク公演とその後
2012.03.13 [松本 すみ子]
シニアが主役となる劇団
稽古終了後の劇団「すずしろ」のみなさん
団塊世代が20代のころ、演劇もひとつのブームでした。今はなき「渋谷ジャンジャン」、本駒込にあった「300人劇場」、そして、学生などが自主的に運営した各地のアングラ劇場。あのころ、演劇に情熱を傾けた多くの若者も、今やシニア世代になりました。
だからかどうか、日本にはシニア劇団がたくさんあり、現在、100以上あるといわれています。2011年9月には東京・池袋で、北は北海道から南は宮崎まで、全国16の劇団から220名が参加した「全国シニア演劇大会2011」(※)が開催されました。
各地でたくさんのシニア世代が、演劇という声と体を使った手段で自己表現を始めているわけです。果たせなかった夢への挑戦でもあるかもしれません。そのことを思うと、高齢化を暗い話としか捉えない社会は間違いだと思えてきます。中には、ニューヨークのブロードウェイで公演するという快挙を成し遂げたシニア劇団もあります。今回は、その劇団の活動ぶりを紹介することにしましょう。
劇団の名は「すずしろ」。お察しの通り、ネーミングは大根役者から。活動場所は大阪府箕面市です。というよりも、実は箕面でしか演じたことがないのです、ブロードウェイを例外として。
劇団「すずしろ」(※)は、2004年に大阪府箕面市が開催した市民企画講座 「60歳からの演劇入門」の受講者が中心になって設立したアマチュア劇団です。60歳から80歳代までの20数名で構成されています。市民企画講座ですから、「シニアのための演劇講座を開催して!」と提案した人がいたのです。それが秋田啓子さん(66歳)。秋田さんは60歳以上の人しか入れない劇団を作りたいと考えていました。
劇団を旗揚げして団員を募集してみると、すごい人気で抽選に。秋田さんは「やっぱり、皆もこんなところを探してはってんわ!」と、嬉しかったそうです。受講者も「60歳以上と書いてあったから参加したの。これが若い人と一緒だったら、ようせん!」。そう、シニア世代が主役となる劇団が必要だったのです。子供や若い人がいると、主役はどうしても彼らになってしまいます。「そんなのいや!」なのです。
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