松本すみ子の「@シニア」

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第10回
シニア劇団「すずしろ」、ニューヨーク公演とその後

どうせやるならブロードウェイで

ニューヨーク公演「煙が目にしみる」の1シーン

劇団には指導者が必要です。秋田さんは子供劇団を指導していた倉田操さん(35歳)に依頼しました。倉田さんは脚本家・倉本聰が主宰していた富良野塾の出身。自分たちの子供よりも若い世代でしたが、自己満足で終わらせないためには、プロの指導が必要と考えました。秋田さんのこの選択が、後のブロードウェイへのキーとなるのです。

年を忘れ、自分を解放できる演劇。充実した活動を数年続けていた団員たちに、突然、倉田さんは「ニューヨークで公演しませんか」という提案を始めます。指導するうちに、60歳を超えた人たちの真剣さや演劇への思いに感動し、もっと多くの人に見てもらいたいと思うようになっていました。そこで、ドキュメンタリー映画にすることを思いついたのです。ところが、相談した映画関係者の口からは「シニア劇団は話題として弱い。嘘でもいいから、ブロードウェイを目指しているくらいじゃないと」という言葉が。でも、倉田さんは逆に「そうだ、ブロードウェイで公演するのもいい」と思ったそうです。

とはいえ、団員は皆、猛反対。「箕面以外のどこでもやったことがないのに、なにがブロードウェイやねん!」。しかし、そこはアクティブシニアの集まり。皆、だんだんその気になっていきます。「一生に1回くらい、夢をみてもいいのではないか」「今だからこそ、とんでもないことに挑戦できるのかも」。

提案したものの、倉田さんもブロードウェイ関係者を知っているわけではありません。が、そこは若い指導者。団員の力も借りながら八方手を尽くして、とうとう引き受けてくれる劇場を見つけ出しました。秋田さんは「たくさんの人に支えられ、幸運が100くらい重なった」と言います。

ニューヨーク公演は満員御礼

ついに2010年6月、劇団「すずしろ」はブロードウェイの小劇場で「Smoke Gets In Your Eyes(煙が目にしみる)」の上演日を迎えました。地元の新聞やフリーペーパーで紹介されたこともあって、日本から来たシニア劇団は大注目。ジューン・ハポック・シアターの100席は超満員。終了後、地元の人たちから「素晴らしかった、感動した」という言葉が寄せられ、涙する団員達。公演は大成功でした。

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