第1回
定年も悪くない
2011.09.13 [松本 すみ子]
本物のシニアになる団塊の世代
少し暗い話になりました。でも、このようなことから、私は自分もこれから向かうであろうシニアに関することを仕事にしていこうと思ったのです。シニアが幸せでない社会は、どの年代にとっても幸せではない。シニアの状態で、その国の幸せ度が測れるのではないでしょうか。
リストラにあった私の友人たちは、その後もしたたかに生き抜いています。リストラにあわなければ、何の疑問も感じることなく、10年一日の如く会社に通い、定年を迎えていたことでしょう。しかし、思いがけないハードルが立ちふさがり、そこでいったん立ち止まって、仕事、自分の能力・希望、家族、将来、そういうものを考える機会を得ました。そして、決断しました。むしろ一生ものの仕事を見つけ出した人は少なくありません。
だから、私は「定年も悪いことではない」と言いたいのです。50歳のリストラとは違って、60歳の定年は自分で準備しようと思えばいくらでもできます。それなのに(と言ってしまいますが)、2006年に施工された「高齢者雇用安定法」により、60歳以降の再雇用制度が始まりました。これは満額の年金をもらえる年齢が65歳に延びることを考慮して、まさに団塊の世代を意識して作られた法律です。しかし、ある意味では不幸なことに、たかだか定年が2・3年延びるだけのことで、自分の人生の来し方・行く末を真剣に考えるチャンスを失った人が多いのではないかと思っています。
団塊世代は2012年から65歳(高齢者)になってきます。本物のシニアになるわけです。定年後、またどこかの企業に雇用されていた時代、それをめざした時代は過ぎました。現実を見極め、次のステップに向かいつつあります。それに4・5年もかかったのは、仕事人間だったのだから、仕方ありません。日本の高度成長期を支えたことを思えば、今までのことは、少々大目にみることにしましょう。
今まで例がない長寿の時代、まだまだ生きなければなりません。もう終わった人なんて思えない。彼らは今後、どのような生き方をするのでしょうか。私にはとても興味深いことに思えます。自分も含めて、新しいシニア世代の動きをずっと追っていきたいと思っています。
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