第2回
高齢者のためのマイカー開発
2011.09.27 [松本 すみ子]
車なしでは暮らせない現実
さて、長々と交通事故の顛末記を書きましたが、もちろん、今回のテーマはそれではありません。私たちの乗ったタクシーと正面衝突した車を運転していたのは83歳の男性でした。どうやら、彼の居眠り運転が原因の事故。「なんで、そんな年齢の人にまで運転免許を交付するのか」と、怒り心頭でした。
とはいえ、しばらくして冷静に考えてみると、地方では車が必需品なんだということに思いが至りました。私は交通網の発達している東京に暮らしているため、どこに行くにも車の必要性はそれほど感じていません。私も以前は車を持っていました。でも、土日くらいしか乗る時間がなく、それも仕事で忙しくなって、ほとんど放置状態に。それでも、バッテリーが上がるんじゃないかと心配で、歩いてもいける距離の駅前スーパーにわざわざ車で出かけたり。そのプレッシャーに耐えきれず、車はとうとう手放しましてしまいました。
しかし、地方ではかなりの大都市でも車なしでは動きにくいのが現状です。私の故郷は仙台という都市部ですが、やはり車がないと不便です。農村などでは1人に1台が普通でしょう。また、買物難民が問題になっています。近くのスーパーが撤退して、食品や日常品を手に入れるのが困難な場所では、車を運転できる人は貴重な人材でもあるのです。
事故を起こした83歳のご老人も、どこかに行くのに、いちいち娘や息子に頼むわけにはいかず、車がなくては成り立たない毎日だったのでしょうね。事情聴取をした警察官が「田舎では80でも90でも運転しているよ」と言っていました。そういう人から免許を取り上げることは酷というものです。だから、高齢者の事故は増える一方。
では、メーカーはなぜ、高齢者が運転しやすい車を開発しないのでしょうか。最近は、前方に障害物がある場合は自動的に停止する車や、車間距離を適正に保つ車、バックがしやすい車などがあるようですが、もう少し違う視点も必要な気がします。
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