第19回
シェアハウスを見に行く
2012.09.11 [松本 すみ子]
手軽で便利な賃貸システム
まちに溶け込むシェアハウス
8月の暑さ真っ只中のある日、杉並区に完成したというシェアハウスの見学に向かいました。そのレポートの前に、シェアハウスとは何かを考えてみましょう。シェアハウス(ゲストハウスとも言う)といえば、1軒の家を複数の人たちで共有するシステムのこと。部屋は個室ですが、リビング、キッチン、トイレ、お風呂などの共用部分があり、冷蔵庫やテレビ、エアコン、洗濯機などの備え付け家電も共同で利用することができます。礼金敷金や保証人が必要ないというシェアハウスもあるようです。
この方式は、一人でワンルームマンションなどを借りる場合に比べれば、部屋代、生活費、家具類購入費、諸雑費を格段に安く上げることができます。初めて実家を離れる人、一時的に住む場所を探している人、この場所に一度は住んでみたかったという人、予算の少ない人などにはとても便利なシステムといえます。
一方、このシステムは貸主側にもメリットが大きいのです。今、地域社会で大きな問題になっているのは、古くて人の住まなくなった住宅の扱い。生まれ育った実家、幼い時によく遊びに来た親戚の家。そうした家を相続したとして、自宅がすでにあれば、わざわざ修理して移り住むことはしないでしょう。
かといって、建物を壊して更地にするには費用がかかります。懐かしい実家を残しておきたいという気持ちもあったりします。どうしたらいいかと悩みつつ、しばし放ってあるというのが現状です。
古い家の扱いは、個人の問題にとどまりません。同じ地域に住む人たちにとっても、放置された建物は防犯・防災上の大きな問題になっています。中には持ち主がわからなくなっていて、連絡を取りたくても取れないままに、ますます老朽化していく家もあります。人口が減っていく日本の社会問題の一つなのです。
こうした状況の中、不動産業者、投資会社などが、投資効率のいい事業として、古民家をリノベーションしたシェアハウス事業を推し進めています。シェアハウスは空き家住宅対策として、また、貸主、借主、仲介者のどちらにもメリットのある解決策として注目されているのです。今や、各地に続々と誕生しています。
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