松本すみ子の「@シニア」

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第22回
65歳まで再雇用って、幸せなんだろうか

再雇用ホワイトカラーをどう使うか

ならば、希望者全員を再雇用するくらいなら、いっそのこと、定年を65歳にしたらいいのではないかと思いませんか。お察しの通り、企業はそんなことはできません。それをしたら「希望者全員」ではなく、「全員」になってしまいます。出ていく人がいなくなるのですから、高齢の社員が増え、社員の平均年齢が高くなり、人件費が膨大になります。仕事も用意しなければなりません。
今までの再雇用制度の下ですら、再雇用社員に支払う給与を確保するために、新卒や若手の採用を手控えざるを得なくなっています。その顕著な例が公務員です。国は国家公務員の採用を大幅に減らしました。これは公務員にも再雇用制度が適用された(公務員の場合は再任用制度という)ことも大きな要因となっています。優秀な若手の採用を押さえて、その分を再任用の給与に回すのかと、マスコミなどで取り上げられたことは記憶に新しいと思います。
企業や雇い主にとって、国がいわば勝手に決めて、義務化してくる再雇用制度は頭の痛い問題であるに違いありません。へたをすると、経営さえ危うくしかねない。特に、ホワイトカラーを大量に抱える大企業ほど悩ましい問題ではないでしょうか。
実は、中小企業では法律が定まるのを待つまでもなく、とっくに再雇用や定年延長は進んでいます。中小企業では知名度やPR不足から、新卒や若手を採用するのは難しい状況です。彼らの技術や経験を引き継ぐ人材がなかなか確保できません。だから、特殊技能を持った人や業界を知り尽くした経験ある社員が、定年だからといって辞めてしまっては大変なことになってしまいます。
一方、大企業のホワイトカラーの多くは特別な技能を持っていません。まだ、年齢や昇格と共に管理職となり、現場もすでに遠のいています。定年後の彼らに何をしてもらったらいいのか。企業はそれを決めらないままに、とにかく制度を取り入れなければならないという制度の独り歩き状態になっているのでが現状です。

再雇用の実態

では、再雇用された人たちはどうか。こちらも問題が多いです。私の知人は3年の期限付きで再雇用を選択しましたが、早くも半年で暗い顔になり、とうとう1年後には再雇用を辞退してしまいました。
彼が言うには「会社に行っても所在無い」。特にやるべきことが決まっているわけではない、もちろん、指示されないと動けないほど能力がないとは思ってないので、自分なりに今までの経験と人脈を生かして提案をするものの、会社からはあまり反応がない。期待されていないのか。
昔の部下が所属部門の責任者なので、自分にできることがあれば、アドバイスでもなんでもすると言ってみたが、むしろ迷惑そうにも思える。若い社員とのコミュニケーションもうまく取れない。自分はつくづく、この会社では終わった人間なんだということを自覚させられたというのです。
さらに、最近、こんな記事が目につきました。以下、産経ニュース(※)から抜粋。
大手計測器メーカーのタニタ。東京都板橋区の閑静な住宅街にある本社では、60歳を過ぎたベテラン社員が、若手社員らのそばで社内を清掃している。
同社は2年前、65歳までの雇用延長の義務化を見据えて、60歳定年を迎えた社員を一定条件で再雇用するタニタ総合研究所を設立した。64歳までの20人を再雇用し、主に本社のビル管理や機器リースなど外部に委託していた業務を手がけ、コスト削減に貢献しているという。
「仕事に就く前には十分に話し合い、納得してもらっている」(タニタ総合研究所の今正人社長)(以下、省略)
この記事を読んで、果たして「再雇用」は第2の人生で幸せな生き方なのかという疑問を持たざるを得ません。こうした仕組みを作っただけでも、この会社は真剣に取り組んでいると言えます。しかし、彼らの脳力を生かすもっと違った方法はなかったのでしょうか。
もちろん、清掃の仕事を下に見るわけではなく、やり方に問題があると思うのです。人には傷つけてはいけないプライドというものがあります。それは年を取っても同じです。
皆さんは、どう思いますか。
私は、定年後の人生は皆が思っているよりも多様性があると思っています。機会をみて、またその話を書きます。そして、1年で再雇用を辞めてしまった知人が今、どんなに充実した第2の人生を送っているかも紹介したいと思います。
※産経ニュースhttp://sankei.jp.msn.com/economy/news/120830/biz12083008470002-n1.htm

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