第31回
地域デビュー心得12カ条(その2)
2013.07.09 [松本 すみ子]
前回は、「地域デビュー心得12カ条」のうち、第1条から第4条までをお話ししました。 今回は第5条から最後まで一気にいきましょう。
5.仕事も役職も組織での自分を忘れる
退職したばかりの人が集まると、まずは、どこの会社にいて、どんな仕事をしていて、役職は何々、という話から始まることが多いようです。気分はまだ会社や組織に残っているからなのでしょう。また、いわゆる世間話が苦手の人は、どうしても話題が現役時代の仕事や会社のことになりがちです。
以前、初めて会った方に名刺をいただきました。「まだ、お勤めなんですね」と聞いたところ、「いや、もう1年前に辞めました」という答え。彼はどうしても、自分が一流企業でそれなりの役職にいたことを知ってもらいたかったらしいのです。でも、私は「なんて、あきらめの悪い人なんだろう」と思っただけです。一流企業だからといって、何もびっくりしません。皆、そんなものです。
話しのきっかけは仕方ないにしても、次からはそういう話は止めましょう。それよりも、地域散歩での思いがけない発見や、町会のイベントや行事などの話してみましょう。「なんか面白いところない?」でもいいのです。このほうが断然話が盛り上がります。
6.自分の意見をいう
組織で生きてきた人がなかなか逃れられない後遺症があります。りっぱなご意見を言うのですが、では、あなたはどうしたいのか、どうするのがいいのか、個人の意見は全く言わない人がいます。大所高所、建前、第三者、他人事の意見ばかり。仕事では競合があれば、ライバルもいる。うっかりしたことは言えなかったので、そうした癖が身についてしまっているのかもしれません。
でも、それでは仲間はできません。もう組織の一員ではないのです。自由に生きる一般市民です。何かを言って、敵に足元をさらわれる心配も、査定が下がる心配もありません。私はこうしたい、あなたはどう思うか。そういう関係の楽しさを知ってみてください。
7.相手のいうことを頭ごなしにNOといわない
これも後遺症の一つです。組織で係長、課長、部長、本部長などと役職が上がっていくにつれ、仕事柄、語ることはいくらでもできるようになります。一方、人の話をじっくり聴くのは苦手です。「それで、結論は?」と急かせてみたり、話の途中から説教になってしまったり、一方的に指図してしまったり。また、「そんなことより、言われたことをちゃんとやれ」「それはこうすればいいんだ」と、頭ごなしに意見を否定したり。
組織ではそれを許してもらえます。上司は部下の評価や人事の権限を持っているし、なにより、そこは労働の対価として生きる糧(つなわち給料)をいただく場だからです。しかし、地域社会では皆が平等です。そして、様々な人生経験と価値観を持った人が集まっています。いろんな意見があって当たり前。意見の合わない人がいても当たり前。
自分の意見は正しいはずだと肩肘張らずに、そうか、そんな意見もあるのだなあと余裕を見せつつ、ちゃんとした議論ができる真の大人になりたいものです。
8.最初から難しいことはしない
何をしていいかわからないという人がいる一方で、頭の中にはさまざまな情報とそこから導き出した理想の道が渦巻いている人もいます。特に組織の中で、大きなプロジェクトや新事業を立ち上げた経験のある人などは、つい壮大でがっちりしたプランを考えがち。でも、本人は壮大だとは思っていません。会社ではそれが当たり前だったから。
しかし、これから生きるのは地域社会。そして、始めるのはまず自分一人。自分の経験と知恵を基に、自分のスキルだけで始めなければなりません。組織では当たり前だった資金も人材もありません。「小さく生んで大きく育てる」という言葉がありますが、まさにそれが大事です。まず、身の丈でできることから始め、次第に仲間や資金を集め、気がついたら、そこそこの活動になっていたということのほうが理想的です。
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