名医に聞く

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第10回
〈外反母趾〉 一番の原因は、合わない靴。靴を変えても改善しない場合は手術も。

困っていないのなら、治療の必要なし

足の親指が人差し指の方に骨ごと曲がってしまう症状、外反母趾。親指が骨ごと曲がってしまうことから、足の親指の内側の骨が突出し、その部分が靴に当たることで痛みを伴う。

「一番の原因は、合わない靴を履くことです。狭すぎる靴で足先を圧迫するのも、広すぎる靴で足が前に滑るのもいけません。指に負荷がかかりますからね。親指の付け根がぴったりあっているのがいいんです。あとハイヒールも靴のなかで足が前に滑るのでよくありません。よく、女性は筋肉や骨が弱いからなりやすいとか、遺伝が関係しているとかいいますけどね、厳密にはよく分かっていません」

と語るのは、日本靴医学会理事長で、DLMO(デルモ)と呼ばれる画期的手術を開発したことでも知られる外反母趾治療の名医・井口傑医師だ。

外反母趾の患者は10対1の割合で圧倒的に女性が多いのだが、それは、デザイン優先で合わない靴を履く女性が多いからだろうと井口医師は考えている。

外反母趾の診断は角度で行う。

「X線撮影で親指の関節の出る角度(外反母趾角)が10度までは正常で、20度以上は外反母趾に分類します。その間はグレーゾーンです」(同)

なんだか大雑把な分類だが、それには理由がある。

「外反母趾は単なる変形の名前ですからね。分類上は外反母趾であっても、治療するかどうかは、患者さんが何を困っているかで決まります。痛みなのか、美容的な問題なのか、靴なのか、それによって治療の内容が変わってくるのです。本人が困っていないのなら、治療は必要ありません。
たとえば、手術を希望する患者さんの3分の2は痛み以上に、見た目的に気になるというのが理由ですし、あとの3分の1の半分は曲がっているのは気にならないけれど、他人よりスマートな靴を履きたいからというのが理由です。本当に痛みがひどく、こちらで処方した靴を履いても、何をやっても痛くてしょうがないからと手術に至るのは10人に1人か2人です」(同)

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