名医に聞く

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第10回
〈外反母趾〉 一番の原因は、合わない靴。靴を変えても改善しない場合は手術も。

日帰り可能な低侵襲手術「DLMO」

外反母趾の手術法は100種類以上あるといわれているが、なかでも井口医師が考案したデルモ(DLMO)という手術法は有名だ。これは、局所麻酔で1cmから1.5cm程度切り、そこにキルシュナー鋼線(こうせん)という特殊な器具を挿入。次に専用のカッターで骨を1個所切断した後、骨を正しい位置に戻す。最後に先ほど挿入した「鋼線」で親指の骨を固定するというもの。

「従来は外反母趾の手術は2週間程度の入院が必要でしたが、デルモなら日帰りも可能です。20分ほどの手術時間で済みますし、手術瘢痕がほとんど目立たないのも特徴です」(同)

加えて費用も、以前なら15万円はかかったものが3万円ほどで済む、なんともありがたい手術法だ。

ただし、安易に手術を勧めることはしない。

「手術は最後の手段です。簡単に考えてはいけません。
私がこれは手術しかないと診断するのは、親指が隣の指と重なって、下にもぐりこんでいる場合です。その状態で歩いていると指の第二関節が脱臼して非常に痛みます。それから裸足で歩いても変形のために痛むという方も手術を適応します。裸足以上に足に優しい靴はつくれませんからね。
あとは、30度~40度以上のきつい曲がりがあって、ご本人がその曲がりを正すことを強く希望されて、かつ手術も辞さないという場合には手術をします」(同)

「できるだけ手術はしない」というポリシーを持つ井口医師は、どうしても足に合う靴が見つからないという患者の切実な声に応えて、外反母趾の人が履いても痛くない靴を開発した。

「最初は普通の靴ですが、履きはじめると足の変形に応じて当たっているところがきれいに伸びる靴です。それも普通なら3カ月か1年しないと伸びないものが、ほんの3日足らずで伸びるのです。でも、売れませんでした(笑)。足の変形が傍目に分かる靴は履きたくないんですね」(同)

デルモにも負けない、井口医師の画期的な発明品『トパーズプレミアム』は、サイトから購入可能。痛みに困っているけれど、手術はしたくないという方は、ぜひ試してみるべきだろう。

●トパーズプレミアム
http://topaz-shoes.com/product/product.html

名医のプロフィール

外反母趾の名医

井口 傑(いのくち すぐる)

至誠第二病院 足と靴の医療センター 非常勤医師、日本靴医学会理事長(第13回会長)、日本足の外科学会理事(第24回会長)。

1970年 慶應義塾大学医学部卒業。同整形外科助手、東京専売病院整形外科部長兼リハビリテーションセンター長、慶應義塾大学医学部整形外科講師、慶應義塾大学医学部総合医科学研究センター・整形外科教授等を経て、現在に至る。
主な著書に、『足の診療ガイドブック』(南江堂、2001年)、『新版・外反母趾を防ぐ・治す(健康ライブラリー)』(講談社、2007年)、『足部疾患の保存療法と手術療法(新 OS NOW No.15)』(メジカルビュー社、2002年)、『足のクリニック』(南江堂、2004年)、『足のクリニックⅡ』(南江堂、2008年) などがある。

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