第8回
〈肺がん〉 臓器別がん死亡数はトップ ただし、早期発見ならほぼ治せる
2011.08.30 [「病気・病院・医者」]
抗がん剤は『分子標的薬』へ 劇的効果の新薬も登場
治療は、外科療法と放射線療法、抗がん剤療法(化学療法)の三本柱を、ステージによって組み合わせるのが基本。
「最近の進歩としては、外科療法では、胸腔鏡手術の普及が大きいです。当院では2008年から、主に早期の肺がん(概ね1A期)を対象に、最長で3~4cm程度の傷3~4カ所でできる胸腔鏡手術での根治手術を導入しています。それから、極めて早期の肺がんには従来標準手術として行われてきた肺葉切除でなく、区域切除や部分切除(より小さい範囲での切除)も行うなど、機能の温存と手術の低侵襲化が進んでいます。またこの数年は、1B期から3期までの方で手術になった方には、術後の化学療法をお勧めして、少しでも成績を向上させる補助化学療法が施行されるようになってきました」(同)
2010年には、抗がん剤療法の分野で大きなニュースがあった。
それは新たな分子標的薬の登場。分子標的薬は新タイプの抗がん剤だ。
従来の抗がん剤(化学療法薬)は、がん細胞だけでなく、正常細胞も同じように攻撃してしまう。そのため、がん細胞を殺そうとすると、正常細胞にも深刻なダメージを与えることになる。化学療法薬による治療で重い副作用が現れるのは、がん細胞も正常細胞も区別することなく攻撃するからだ。
一方、分子標的薬は、がん細胞が持っているある特定の増殖機能部分だけをターゲットにする。そのため、がん細胞には効果を発揮するが、化学療法薬のように、正常細胞まで一緒に攻撃してしまうようなことはない。肺がんの分子標的薬としては近年非小細胞肺がんの一つである腺がんの一部でEGFRという遺伝子に異常があるがんに「イレッサ」がよく使われるようになっている。
その肺がんの分子標的治薬に、2010年、「ALK(アルク)阻害剤」と呼ばれる新薬が登場した。この薬は、「EML4-ALK遺伝子をもつ腺がん」に劇的に効くという。
「ただ、日本ではまだ臨床試験の段階で発売には至っていませんし、この薬が効くがんも、腺がんの5%ぐらいしかありません。でも、分子標的薬による治療は、今後有望だと思います」(同)
三本柱の治療法以外にも、免疫療法やレーザーなど、さまざまな治療法があるが、中川医師は選択については慎重だ。
「外科は何十年も歴史がありますが、放射線治療の最新の照射方法の歴史は10数年しかありません。たとえば、局所制御率というのがありまして、放射線をかけたところが、うまく落ち着いていてくれる率が85%から90%ぐらいあると、ピンポイント照射や重粒子線治療をしている医師は言いますが、現在はそうだとしても、何十年も経ったらどうかというのはまだわかっていないんですよ」(同)
治療の選択肢が増えるのはありがたいが、同時に、選択や組み合わせのむずかしさも増すということなのかもしれない。それらの最新知識・技術を持つ専門家によるチーム医療は益々重要になるだろう。
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