第1回
〈アルツハイマー病(認知症)〉 診断法はあと5年、治療法は10年で確立するかもしれない
2011.04.26 [「病気・病院・医者」]
治療の未来――
10年ごとに大きな動きがある
そして研究は着実に進んでいる。
「たとえば原因は、アミロイドβ蛋白という物質が、脳内に異常に蓄積されてしまうせいだということが解明されてきました。そこで今世界では、この原因物質に介入することで、病気の進行を止めようとする次世代治療薬の開発が進められています」(同)
原因物質の解明は、治療よりも一足先に、診断に対して画期的な進歩をもたらした。
「従来は、CTやMRI検査で脳の萎縮を調べ、さらに脳の血流を調べるスペクト検査や、酸素やグリコースの消費量から脳の活動を見るペット検査で診断していましたが、昨今はアミロイドβ蛋白がどれくらい脳に蓄積されているかを見るペット検査でその溜まり具合が画像として映し出すことができるようになりました。これは精度の高い早期診断に大変役立つと期待されています。」(同)
アルツハイマー病は早期の診断・治療開始が非常に重要だが、患者や家族が異常を感じて医療機関を受診しても、病気を発見できないケースが多く問題になっている。原因物質が一目瞭然の検査法が確立し、普及すれば、軽度のうちに治療を開始できる患者が増えると新井医師は期待している。
一方、治療法についても、アミロイドβ蛋白を脳内から減らす研究が盛んに行われている。
「診断のほうは5年、治療法は10年ぐらいの間に確立するかもしれません」(同)
中高年と話していると、「最もなりたくない病気はアルツハイマー病」という人が少なくない。人格の崩壊に至る病はある意味、死ぬよりも怖いのだ。そのアルツハイマー病が、あと10年ぐらいのうちに、怖くない病気になろうとしている。
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