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第19回
慢性腎臓病(CKD)1/2

危険性が高いのは、高血圧、糖尿病、家族歴がある人

慢性腎臓病の発見には、定期検診が有効だ。
年に一回検診を受け、尿検査でたんぱくが出ているかどうかと、血液検査でクレアニチンを測定し腎臓の働きを確認する。異常がある場合には精密検査を受け、確定診断には、生検といって腎臓の組織を一部採り、顕微鏡で評価する検査を行うこともある。

「原則としては、腎臓病になる危険性が高い、高血圧、糖尿病、家族歴がある人は検診を受けましょうと推奨しているのです」

とはいえ、健康に関心の高い人はきちんと検診を受け、危険性の高い人ほど検診を受けようとしないのが世の常。
啓蒙の道は険しい。

食事療法の徹底にはチーム医療が不可欠

慢性腎臓病の治療で重要なのは、薬物療法による血圧コントロールと食事療法だ。

「腎臓は毛髪よりも細い血管の塊なので、血圧が高くなると傷づいてしまいます。そこで、降圧藥を使って収縮期血圧を130mmHg未満、拡張期血圧を80mmHg未満に抑えて腎臓を守ってあげるのです。尿中にたんぱくが1日1g以上出ている場合は、収縮期血圧を125mmHg未満、拡張期血圧は75mmHg未満に維持します。
主として用いられるのは、ACE阻害薬とARB(アンジオテンシンⅡ(ツー)受容体拮抗(きっこう)薬)のどちらか。ACE阻害薬とARBは、ほぼ同じ効果をもち、血圧を下げる働きのほか、腎臓を保護したり、尿中のたんぱくを減らしたりする作用があります」

薬物療法は薬をきっちり飲めばいいだけだが、食事療法はそうはいかない。

「基本は塩分、たんぱく質を控えることですが、患者さんに実行してもらうのはものすごくむずかしいですよ。
人によっては、どうして自分の生活を変えなくちゃいけないんだと思ってしまいますからね。好きな食べ物を我慢するくらいなら死んだ方がいいとか…。
よって、まずは食事療法をすることが、病気から体を守るために必要だということを理解してもらわなくてはいけません。これが第一関門。
つぎに、塩分やたんぱく質がどの食べ物にどれくらい入っているかを自分で判断できるようにします。宅配食を毎日とってそれだけ食べる人ならいいですが、普通は自炊したり、外食したりしますから、制限食を自分で選び、作れるようになる必要があります。これが第二関門。
さらに最終関門として、自分で作ったものを食べられなくてはいけません。いくら体にとって理想の食事でも、好みに合わなくて食べられない人もいます。特にお歳をとられた方は、薄味がどうしても受け付けないとか。
それは医師が口頭で説明するだけではだめで、やはり看護師さんとか栄養士さんとかいろいろなスタッフがチームを組んで、相談にのったり励ましたりしながらやらなければできません」

なるほど、食事は毎日のこと。一週間ぐらいなら楽勝でも、生涯続けるのは大変そうだ。ようは習慣づければいいのだろうが…。

名医のプロフィール

慢性腎臓病の名医

小松康宏(こまつやすひろ)

聖路加国際病院 副院長、腎臓内科部長、QIセンター長、
千葉大学医学部臨床教授
東京女子医科大学腎臓病総合医療センター 非常勤講師
千葉大学医学部卒業、ノースカロライナ大学チャペルヒル校公衆衛生大学院卒業、フロリダ大学医学部薬理学教室、UCLA腎臓内科・腎臓小児科留学、千葉県こども病院腎臓科医長等を経て2011年1月より現職。

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