第21回
あいまいな症状でつらいときには甲状腺疾患を疑おう
2012.05.22 [「病気・病院・医者」]
代表的な病気は、バセドウ病と橋本病
心臓や腎臓と同じように、甲状腺は体になければいけない重要臓器の一つ。
のど仏の下でチョウが羽を広げたような形で存在し、元気の源ともいえる甲状腺ホルモンの分泌をつかさどっている。
「ホルモンを分泌する臓器には、甲状腺のほか、副甲状腺、副腎、脳下垂体などがありますが、なかでも甲状腺は一番大きく、なおかつ、そこで起こる病気は、ほかの臓器よりもはるかに頻度が高いといえます」と甲状腺疾患の専門病院「伊藤病院」の伊藤公一院長は解説する。
甲状腺の病気には、「働きの異常」と「形の異常」がある。
「働きの異常」は、すなわちホルモンの分泌障害であり、ホルモンが出過ぎる「甲状腺機能亢進(こうしん)症」と不足する「甲状腺機能低下症」がある。
前者の代表は「バセドウ病」で、甲状腺ホルモン分泌過剰により、体の中のエネルギーが空焚き(からだき)されたような状態になる。
「代謝が活発になり過ぎるため、とにかく暑がりになり、汗をかく。手足が震える。動悸(どうき)がする。食欲が増し、食事をとるのにやせてくるなどの症状をきたします」
なお、バセドウ病といえば「眼球突出」のイメージがあるが、必ずしもこの症状が出るとは限らない。
一方、後者の代表は「橋本病」。甲状腺ホルモンの分泌減少により、全身の代謝が低下するため、寒がりになる。むくむ。無気力になる。食欲がないのに体重が増えるなどの症状が起こる。
甲状腺の腫(は)れ、しこりなどの「形の異常」で問題になるのは腫瘍(しゅよう)だ。圧倒的に頻度が高いのは「腺腫様甲状腺腫(せんしゅようこうじょうせんしゅ)」という良性腫瘍である。悪性腫瘍でも大多数は「乳頭がん」という性質のいいがんだが、中には「未分化がん」という非常に危険ながんもある。
疑わしいときには専門医で検査を
推定500万人と、患者数が多い割には、甲状腺疾患はなかなか発見されにくい。
というのも、その症状は多彩な上に、すべてが漠然としているため、これこそが甲状腺のホルモンの異常によるものだというものがないからだ。
「ズバリ甲状腺の病気というサインがないのが問題です。女性に圧倒的に多く起こるということより更年期障害や、うつ病、心臓病ではないか…というように様々な診療科をさまよい、専門医にたどりつくまでに時間がかかってしまうことがあります。
女性の方で、なんとなく疲れやすい、体重が変化してきたなどの症状が出たときには、ぜひとも甲状腺疾患を疑って、悪くなる前に検査を受けてください」そう伊藤医師は訴える。
そこでいったん専門医の診療現場にたどり着けば、あとはすぐに結果が出る。
専門病院であれば、受診から1時間以内に病気の有無、種類、重症度までの診断ができる。
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