名医に聞く

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第21回
あいまいな症状でつらいときには甲状腺疾患を疑おう

検査の主軸は2つ。
1つは採血で、わずかな血液量で甲状腺ホルモンの分泌状況、自己免疫の異常をあらわす抗体価の存在有無が確認できる。甲状腺の病気は、自己免疫疾患の一種だからだ。

もう1つは超音波検査。甲状腺の形、大きさを見ることで、腫瘍がある場合には良性か悪性かの見当もつく。悪性を疑われる場合には、直接腫瘍に注射し、細胞を採取し、顕微鏡で診断ができる。

「日本人の甲状腺ガンの90%以上を占める乳頭ガンだと、細胞診で、ほぼ100%の確定で診断が下せます。年々と技術が進歩していますので、現在では2ミリ、3ミリときわめて小さなサイズのガンも見逃しません」

見逃してはいけないといえば、もう1つ。バセドウ病と、本来ホルモンが下がる病気である橋本病で、一時的にホルモンが上昇する無痛性甲状腺炎との鑑別だ。これらは、専門医でなければ、なかなか見極められないという。

「橋本病がバセドウ病と誤診されるケースがしばしばあります。実際は橋本病なのでホルモンの分泌を上げなければならないのに、バセドウ病に対する薬を投与され、火に油を注ぐような形で症状が悪化して来院される患者さんも少なからずいます。
血液検査で抗体値の異常を正確に判断することで、大概のケースは容易に鑑別できますが、時にはシンチグラムという検査を行います」

欧米ではバセドウ病治療の第一選択肢はアイソトープ治療法

バセドウ病の治療には薬、アイソトープ治療、手術の3種類がある。

それぞれに一長一短があり、絶対的な治療は存在しないが、一番目は薬である。薬の場合苦痛はないが、治るまでに3~5年もの時間がかかる。
アイソトープ治療は放射線の内照射療法のこと。放射性ヨードの入ったカプセルを服用するだけの楽な治療だ。内服後6ヶ月くらいから効果が得られるうえに苦痛も全くない。20歳以上で、1年以内に妊娠出産の可能性がない人に勧められており、欧米では古くから第一選択肢となっている。しかし、国内では専用の設備を持つ病院が少ないため、行える場所がきわめて限られている。
手術は甲状腺を全摘する。治療効果は短期間で確実に得られるが、生涯にわたってホルモン剤を服用し続けなければならない。

橋本病の治療はシンプルで、不足している甲状腺ホルモンを薬で補充するだけである。多彩な症状が劇的に改善する。

「いずれも不治の病ではありませんし、治療法は確立されておりますのでご安心ください」

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