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第24回
尿もれは治療可能。泌尿器科できちんと治したい

重症の腹圧性尿失禁には、TVT手術とTOT手術

腹圧性尿失禁の治療には、骨盤底筋訓練や減量などの行動療法、薬物療法、手術療法がある。

骨盤底筋訓練は、1日に5回。
1.1分間のうち約10秒、骨盤底筋を締める。
2.残りの50秒は、力をぬく。
3. 1~2を10回くり返す(つまり10分間行う)。
というもの。

軽症から中等症の人に向いており、重症の人にもある程度の効果が期待できる。
また肥満気味の人は、減量も同時に行うと、効果が上がるという。
(詳しくは、東京女子医大東医療センターのホームページ参照)
薬物療法には、塩酸クレンブテロールが使われ、β2(ベータツー)アドレナリン受容体を刺激することで尿道内圧を高めると考えられている。

「ただし、訓練や薬物療法だけで尿もれは確実に治りません。
ですが、ご本人が希望するのであれば、取り組むのもよいと思います。尿もれは自己申告の病気です。どれくらいまで治したいか、どう治療したいか等のニーズは人それぞれ。違いを受け入れ、尊重してくれる医師を探せばよいのでは」(同)

重症で、とにかく治したいというのであれば、手術を勧められる。
腹圧性尿失禁には、TVT手術とTOT手術という、低侵襲で高い効果が期待できる手術がある。

「TVT手術は、下腹部の恥骨上左右2カ所と腟(ちつ)を1センチほど切開してメッシュ状のテープを通し、このテープで尿道を支えることでぐらつきを抑え、尿をもれにくくする手術です。低侵襲ですが、ごくまれに腸を傷つけるなど重大な合併症が起こるリスクがあります。
TOT手術は、左右の太ももの付け根と膣を切開してテープを通すので、腸を傷つける心配はなく、非常に安全です。どちらの手術も尿道括約筋の力が低下している場合には、尿もれの症状が残る可能性がありますが、TOTの方がその傾向が強いようです。」(同)

一方、切迫性尿失禁の治療には、手術は効かない。

切迫性尿失禁のおもな原因は、過活動膀胱である。
過活動膀胱の原因が脳梗塞等の後遺症や脊髄(せきずい)疾患であっても、原因がはっきりしない特発性であっても、治療は抗コリン薬という膀胱の過敏な収縮を抑える薬が第一選択肢である。

ただし、前立腺肥大症や骨盤臓器脱が原因で過活動膀胱をきたしている場合には、原疾患の治療により尿失禁もなくなることが多い。

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