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第25回
アトピー性皮膚炎。正しく治療すればほとんどの人は改善し、病気と上手に付き合えるようになる

治療の基本は保湿とステロイドの適量塗布

「日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」では,1.かゆみの有無、2.特徴的な皮疹(ひしん)と皮疹の分布状況、3.慢性・反復性の経過を経ているか、の3つの基準を満たせば、症状の程度を問わずにアトピー性皮膚炎と診断するということになっている。

鑑別すべき疾患には、接触皮膚炎や脂漏性皮膚炎、皮膚リンパ腫などがあるが、皮膚科専門医であれば見分けるのは容易だ。

治療は、以下の「3本柱」による治療が標準的に行われている。

1.症状を悪化させる因子を探し、身の回りからできるだけ除く

これはアレルギー疾患ではお定まりの治療法だが、江藤医師はつぎのように説明する。 「ハウスダストやダニなど、アレルギーを起こしている物質を除去することは大切ですが、たとえばダニを完全に除去するなんてできません。昔は徹底させる医師もいましたが、最近は、可能な限り、あまり無理せず、悪化因子を減らしてゆき、次の2,3の柱をしっかり実行すれば十分と指導しています」

2. 保湿剤によるスキンケアで、肌のバリア機能低下を是正する

「肌が乾燥するドライスキンは、アトピー性皮膚炎の大きな入り口です。たとえ皮膚炎がなかったとしても、肌が乾燥している場合はアトピー性皮膚炎の軽微な状態と判断し、悪化する前に治療を開始することをお勧めします」

3.皮膚の炎症を抑えるために、外用薬による薬物治療を行う

外用薬の中心は、ステロイドだ。
「ステロイドを塗ると皮膚が黒くなったり、厚ぼったくなったりすると思い込んでいる人がいますが、間違いです。薬の使用量が少ないと、かゆみが完全に収まらず、24時間チビチビと掻き続けるからなんです。患者さんには丁寧に説明し、分かっていただくようにしています」

そう江藤医師が言うように、適切なステロイドの使用は、アトピー性皮膚炎を治療するうえで最も重要とされている。
ステロイドを使わずに強いかゆみを放置すると、結局は掻破(そうは)してしまい、皮疹が悪化し、さらにかゆみが増してまた掻破してしまう「イッチ・スクラッチ・サイクル(かゆみサイクル)」と呼ばれる悪循環が起きるからだ。

「ステロイドはこわい」という間違った認識にとらわれず、必要な時期に、必要な量を、適切に使用することが大切なのだ。

こうした標準治療では十分な効果が認められない重症の成人患者には、免疫抑制薬シクロスポリン内服療法や、ナローバンドUVB照射療法(新しい紫外線療法)も活用される。

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