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第32回
白内障(はくないしょう)。日帰り手術で、安全・劇的に治せる

点眼麻酔、出血なし、当日中に眼帯なしで歩いて帰宅

診断は、問診、視力検査、眼圧測定、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡(角膜の様子や水晶体の濁り具合を調べること)、眼底検査によって行う。

「問診の際には、いつごろから、どこがどのように見づらいのかを詳しく話すとともに、『前立腺肥大で小水を出やすくする薬を長期間服用している」『これまでに目を強くぶつけたことがある』『過去にレーシック手術を受けたことがある」といったことも詳しくお話してください。
手術中のトラブル防止や、手術の際に水晶体の代わりに移植する『眼内レンズ』の度数を決めるための必須項目です」

日本で行われている標準の治療法は「超音波乳化吸引術」といって、3ミリほどの小さな切開を行い、そこから超音波で濁った水晶体の核を砕き、吸い取って、代わりに眼内レンズを移植するというもの。
超音波による核の砕き方にはいろいろなやり方があるが、切開は極力小さく、手術時間は短いほど、目にかかる負担は軽減される。

「私が考案した『フェイコ・プレチョップ法』なら、点眼麻酔で、傷口は2ミリ以下、3~4分の手術時間で済み、一滴も出血せず、日帰りで、安全な手術ができます。
移植する眼内レンズの選択により、遠視や近視を治すことができますが、最近ではさらに、老眼を治す『多焦点眼内レンズ』、乱視を治す『トーリックレンズ』も広く使われるようになりました」

注射ではなく、点眼麻酔、角膜切開なので、出血も一切なく、術後すぐに物を見ることができ、眼帯なしで歩いて帰ることができる。また、ワーファリンなどの抗凝固薬を服用中の患者でも手術を受けられるなど、フェイコ・プレチョップ法は、現在到達しうる限りの低侵襲治療であり、「極小切開超音波白内障手術」と呼べるだろう。

名医のプロフィール

白内障の名医

赤星隆幸(あかぼし たかゆき)医師

三井記念病院眼科部長
1957年生まれ。1982年 自治医科大学卒業、東京大学医学部付属病院眼科医員、東京女子医科大学糖尿病センター眼科助手、三井記念病院眼科科長を経て、1992年より現職。1992年に白内障の画期的な治療法「フェイコ・プレチョップ法」を発表。現在世界66か国で、年間7500件以上の手術を手掛けている。
Harbin医科大学眼科客員教授、Fudan大学(旧上海医科大学)眼科客員教授、米国イリノイ大学眼科客員教授、アラブ首長国連邦 AEMED眼科客員教授、共立女子短期大学看護学部眼科講師
主な著書「こんな眼にあったら」(人間と歴史社)、「白内障のひみつ」(朝日出版社)、「白内障適齢期」(小学館)

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