文化とアートのある暮らし

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第3回
音と天体の狭間で

他には、作曲家 武満徹さん(1930-1996)の「弦楽器のためのコロナ Ⅱ」が美しいのでプラネタリウムにて投影してみたいと思い、楽譜を実験的に投影しました。この作品は「図形楽譜」と呼ばれるものの一つの例です。図形楽譜は五線楽譜に音符で音の高さを記すような本来の楽譜ではなく、演奏家が想像力を持って自発的な演奏ができるように意図され、あえて抽象的に絵や図形が、時にはカラーで描かれています。「弦楽器のためのコロナ Ⅱ」は、デザインを杉浦康平さんという著名なデザイナーが担当され、武満氏と杉浦氏の共同制作による作品になっています。また、同じ共同制作による「ピアニストのための光冠~コロナ~」も楽譜を投影、同時にピアノの内部を演奏するということも作品と共にご紹介しました。これらの作品は楽譜がカラーで描かれ、描かれた色彩が音と関連しています。そして楽譜にしかけられた組み合わせによって、毎回違う音楽を奏でる作品となっています。

「弦楽器のためのコロナ Ⅱ」楽譜写真では一部ですが、実際にはドーム全体に投影「弦楽器のためのコロナ Ⅱ」楽譜
写真では一部ですが、実際にはドーム全体に投影

最後には、プラネタリウムを投影するシステムエンジニアの方にご協力いただき、オリジナルでオレンジの色で太陽の光を回転させ、日中の明るい日差しから日光が月によって遮られる変化をドーム上で投影。即興演奏と共に表現しました。実際には金環日蝕は、月の隙間から漏れだす太陽の光が強すぎるために、地球上では明るさの変化は感じないようで、太陽を見るための専用メガネを装用しない限りは太陽の欠けた部分を見ることができません。太陽の光が放つエネルギーの凄さに宇宙の果てしなさを感じずにはいられません。

山や海や天体、火山によってできた山のデコボコや温泉、海のしょっぱさ、空から感じられる風、何気なくそこにある自然ですが、それら一つ一つの成り立ちを知ろうとすればするほど、人間が地球上に生きるちいさな存在であることを思い知らされます。かつて古代には、たくさんの宇宙からヒントを得て人が音を奏でてきた歴史があります。それらは古すぎて文献がありません。人の命と共に消えていった作品もとても多く、天から授かって祈りと信仰のあった音楽、日常を楽しむための音楽、いろいろな形で音が育まれていただろうことは想像できるものの、人間が大きな宇宙を見ながら創る音楽にはどんな音が描かれたのでしょうか。音の歴史もはるか古代から、少しずつ在り方を変えて現在に繋がっていきます。

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