第28回
モノトーンの世界に凛とたたずむ・・・ ~山形県鶴岡市・羽黒山五重塔~
2016.02.14 [秋野 深]
日本各地には様々な五重塔があります。有名なところだと、奈良の興福寺や法隆寺、京都の東寺あたりでしょうか。それぞれ個性的で、お好きな方なら、きっとお気に入りの五重塔があることでしょう。私自身は、これまで訪れた中では、なんといっても羽黒山五重塔(はぐろさん・ごじゅうのとう)が印象に残っています。山形県の山岳修行の場として知られる出羽三山(月山、湯殿山、羽黒山)にある、室町時代建立の五重塔です。
たいていは五重塔というと、遠くから見てもすぐにわかるような目立つ建築物ですが、今回、ご紹介する羽黒山五重塔が個性的なのは、森の中にあることなのです。周囲を五重塔よりも高い杉の木立に囲まれていて、その中にひっそりとたたずんでいます。それでいて、現場に立ってみると、羽黒山五重塔は他で見る五重塔とは違う、強い存在感を放っているような気がするのです。
写真は、雪深い2月上旬に訪れた時に撮影したものです。さすがにその時期の参道は凍結や積雪で五重塔に近づくのはなかなか大変でした。しかし、雪降る中で木立に囲まれた五重塔を目の前にしてみると、やはり訪れた甲斐があったと思いました。
■降りしきる雪をうまく表現して、冬の臨場感を強く出してみよう
その日はちょうど降雪も多く、あたりは一面の銀世界。森の奥の方は霞んで見え、肉眼でもその場の情景はモノトーンに感じられました。そこで、この1枚は白黒で撮影することに。モノクロ(白黒)撮影についてはレッスン24で触れていますので、ぜひ参考にしてみてください。
降り続ける雪も、その場の臨場感を表現するのに欠かせないものです。ところが、肉眼ではわかりやすい雪も、写真で表現するのはなかなか大変です。雪のかたまりは1つ1つが小さいうえに、写真は動きのない静止画です。普通に撮影しただけでは、雪が降っている様子は非常に伝わりにくいのです。
この作品では、少し離れたところから五重塔にピントを合わせていますので、カメラのすぐ前を降っていく雪はボケて大きめの丸になっています。技術的には、レッスン26で触れた「前ボケ」と同じです。
もう1つ大切なことは、「前ボケ」した雪をはっきりと表現するためにフラッシュ(ストロボ)を光らせていることです。そうすることで、写真の中の雪が存在感を持ってきます。
その場が暗いわけではありませんが、カメラの前を降る雪をフラッシュの光で明るく照らしているのです。
雪の降る日には、このレッスンの内容を思い出して、雪の描写にぜひチャレンジしてみてください! 積もった雪だけでなく、降る雪も描写できれば、写真で表現できるその場の臨場感は一気に高まります!
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