第32回
天空の世界で生きる ~中国・パミール高原~
2016.06.23 [秋野 深]
広大な中国の中でも日本から最も遠く離れたエリアといってもいいのが、新疆ウイグル自治区のパミール高原です。平均標高が約5000mの大高原地帯で「世界の屋根」と呼ばれ、かつてシルクロードを行き交った人々にとって最大の難所でもありました。
私は、そのパミール高原で暮らす中国の少数民族キルギス族の村を訪れたことがあるのですが、村の標高はなんと3600m。富士山の山頂くらいの高さのところで、人が普通に暮らしているのです。
標高がそれだけ高いと、湿度は低くて日差しは強く、快晴の日の青空の色濃さといったら、自分の目を疑いたくなるような美しさでした。
■青空の色濃さ、万年雪の輝きを順光で!
快晴の空も場所によって青さが違うことをレッスン10「夏の青空や雲を美しく撮影しよう!」でお伝えしました。快晴だと、どの部分の空も青いことに変わりないのですが、太陽を背にして見る順光の青空が一番色濃く見えますし、写真に写すとそれが顕著に表れます。
では、青空と、それを映す高原の湖面の青、そして山肌で輝く万年雪を順光で撮影して、高原の風景の透明感と輝きを表現しました。広大な風景を撮影する時は、自分の立ち位置を変えたくらいでは被写体に対するアングルに大きな変化はありませんので、撮影する時間帯を選ぶことが大切です。時間帯が違えば、光が変わり、目の前の風景の魅力もおのずと変わっていきます。
■大自然の中で力強く生きる人の存在感を!
パミール高原で生きるキルギス族の人々は、家畜としてヤクを育てながら、ほぼ自給自足の生活をしています。村を訪れた私には、大自然のスケールの大きさと同時に、そこで生きる人々の存在感も強く印象に残るものでした。そこでの人々の暮らしは、実に静かで淡々としたものなのですが、人が地に足つけて、まさに「自力で」生きている様子を目の当たりにしたからなのでしょう。【写真2】は、広大な自然を背景に、人が静かに、それでいて力強く生きる様を表現した1枚です。
写真はどんなに広大なところを写したとしても、限られた四角形の中だけで表現されるものです。そのため、どうしても広く大きく写した部分が強調されて伝わりやすくなります。
それだけに、小さく写して存在感を出そうと思うと、色や形など、小さくてもそれなりに目立つ要素が必要になってきます。
風景の中に人をあえて小さく入れて写す効果についてはレッスン19「風景の雄大さを上手に表現しよう!」で触れていますので、ぜひもう一度目を通してみてください。
写真を見返しながら、いろいろなことを詳細に思い出していると、もう一度、その場を旅しているかのような錯覚に襲われます。皆さんも、過去の旅の写真を久々に目にした時にそんな感覚になることはありませんか?
村で出会った人たちはどうしているだろうか・・・。目にした情景は今も変らずそこにあるだろうか・・・。
そんな思いに浸る時は、「やっぱり旅も写真もいいものだなぁ」と、改めて実感する瞬間でもあります。
- 2017.06.08
- 2017.05.11
- 2017.04.29
- 2017.03.28
- 2017.02.11
コメント