第36回
野生の馬の楽園 ~宮崎県・都井岬~
2016.10.05 [秋野 深]
九州・宮崎県の南端に位置し、東に日向灘、西に志布志湾を望む都井(とい)岬は、まさに野生の馬の楽園です。
岬一帯は、大海原を見下ろす急勾配の丘陵地帯になっていて、緑の丘の斜面にたくさんの野生の馬が暮らしています。もともとは、約300年前に当時の藩が軍馬として放牧していた馬がこの地で野生化したとのこと。
大海原をバックに野生の馬が暮らす緑の丘の情景は雄大そのもので、九州の自然のスケールの大きさを感じさせてくれます。
■夕刻の茜色の空を背景に、馬をシルエットで表現!
私が都井岬を訪れた日は、あいにくの雨模様。それでも、日が沈んで、あたりが薄暗くなる時間帯には、志布志湾側の西空の一部は茜色に色付いていました。そこで、西空を背景に丘の上の馬をシルエットで表現してみることにしました。
シルエットというのはとても印象的な表現ではあるのですが、写真でシルエットを使うときには注意しなければいけない点があります。それは、写真に写る明るさと、見た目の明るさは違うということです。
背景のほうが明るかったり、逆光だったりするときに、手前の被写体はシルエット的に暗く写りやすくなります。ところが、写真には暗く写っても、肉眼では、せいぜい暗めに見える程度です。肉眼で真っ黒のシルエットに見えることは、よほど極端な強い逆光の場合を除いてあまりありません。
例えば【写真2】では、馬も地面もほぼ真っ黒に写っていますが、肉眼では、馬の体の色も草の緑色も暗めなだけで、きちんと見えているのです。
この見た目との明るさの違いのことをよく意識して撮影しないと、この写真のように馬も草もシルエットになった結果、馬の頭や前足の部分は草と重なってちょっとわかりにくいシルエットになってしまっています。
■シルエットは、重なりに気をつけてシンプルに!
シルエットとなる被写体は、輪郭だけで表現され、中は真っ黒で平面的になります。そのため、他の被写体のシルエットと重なってしまうと、輪郭がシンプルに伝わらず、インパクトにかけてしまいます。輪郭だけで表現するわけですから、写真を一目見ただけで馬の頭や足の形をダイレクトに伝えるためには、【写真3】のように、シルエットはシンプルにするのがよいでしょう。
これはシルエットで何かを表現するときに共通していえることです。撮影しようとして自分の立ち位置を決める時には、「シルエットで真っ黒になっても、メインの被写体はわかりやすいか、他の物と重なっていないか」を、注意してみることが大切です。
都井岬では、雨の中、私はすっかり暗くなるまで時間も忘れて撮影してしまいました。そして撮影後も、その日は不思議ととても爽快な気分でいることができました。
大海原と、緑の丘と、野生の馬。そのハーモニーが醸し出す独特の壮大なスケールの空気感が、私の脳裏に余韻のように残っていたのでしょう。
- 2017.06.08
- 2017.05.11
- 2017.04.29
- 2017.03.28
- 2017.02.11
コメント