第43回
旅と写真とコミュニケーション ~中国・カシュガル~
2017.05.11 [秋野 深]
旅のなかでの出会いは、よく「一期一会」といわれます。確かにその時その時の出会いは、2度とはできない貴重な体験ですが、私にとって、同じ場所を再び訪れることも旅の大きな魅力の1つです。
季節が違えば風景も食べ物も違い、その土地の魅力を前回訪れた時とは違った形で楽しめます。そして、それ以上に楽しみなのは、前回出会った人たちとの再会です。
今回ご紹介するのは、中国の最西端の都市、新疆ウイグル自治区のカシュガルを訪れた時のエピソードです。
カシュガルの旧市街地の住宅街の中を散策していた時のこと。仲良く手をつないで歩いていた2人の子供が私のそばを通ったので、声をかけて撮影させてもらいました。
「こんにちは!写真を撮ってもいいですか?」
片言のウイグル語で私がそう尋ねると、2人は手をつないだまま振り返って、少し恥ずかしそうに、でもニコニコしながらうなずいてくれました。
2度目にカシュガルを訪れたのは、それから5年後のことでした。
2人の名前と年齢は撮影した時に聞いていたものの住所まではわからず、私は写真を片手に、「確かのこのあたりで撮影したはず・・・」と撮影場所を探しました。2人の子供に5年前の写真を渡すためです。
ところが、カシュガルの旧市街地の路地はまるで迷路のよう。最初は、自分が撮影した場所くらい行けばわかるはずという軽い気持ちでしたが、見当をつけたエリアを歩き回ってもそれらしい場所がどうしても見当たりません。
通りかかった人に、写真を見せて身振り手振りを交えて「この場所わかりますか?写っている子供を知りませんか?」と尋ねてはみるもののなかなか見つかりません。
一緒になって探してくれる親切な人に何人も出会いながらも、迷路のような住宅街をウロウロすること1時間半。
でもなんとかなるものです。ついに「これは私の姪っ子です!」という人に会うことができました。
写真は5年後の2人。相変わらず大の仲良しでした。すっかり成長した2人の女の子は8歳と9歳。実は、再会して初めて2人とも女の子だったことを知りました(笑)。5年前のことは小さかったので覚えていないようでしたが、写真を見ると本人たちも家族も本当に喜んでくれました。
旅で初めてどこかを訪れる魅力は、何より未知のことを知ること、体験することでしょう。そして、再訪する魅力は、変化を知り、出会った人の成長を知ることではないでしょうか。どこかでそれは、再訪するまでの間に自分自身のなかで変わったもの、変わらなかったものを再確認する機会になっているのかもしれません。誰からか具体的に指摘されるわけではない、自分自身に対するそんな"気づき"のようなものも、旅の魅力の1つなのだと私は思っています。
■ワンポイントフォトレッスン
「人を撮影する時にはどのようにしているのですか?どんなことに気をつけていますか?」というご質問をいただくことがあります。
私はシンプルに、「たとえ言葉が十分通じなくても、なんらか必ずコミュニケーションをとること」と「撮られる側の人が快く撮影を許可してくれて、写ることを楽しんでくれていること」を意識するようにしています。いきなり撮影したり、表情や姿勢を変えてもらうように頼んだりということはしません。レッスン07でも旅先での人の撮影について触れていますので、ぜひご覧下さい。
それから、挨拶や「写真を撮ってもいいですか?」という表現など、できるだけ現地の言葉を覚えて積極的に使うようにしています。英語やその国の公用語で通じればよいということではなく、その土地で日常的に使われている言葉で、です。写真はそうしたコミュニケーションの延長線上にあるもの、と考えています。
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