第44回
鳥海山麓は日本の自然景観の縮図 ~秋田県にかほ市~
2017.06.08 [秋野 深]
秋田県~山形県にまたがり、東北地方で第2の標高、2236mを誇る鳥海山。山頂から日本海沿岸まではわずかに15km。 2000m級の山がこれだけ海の近くにそびえているところは、海に囲まれていて山がちな日本列島の中でも大変珍しいといえます。山と海が非常に近いことで、山麓には実にバリエーション豊かな自然が広がっています。
鳥海山麓のエリアは、秋田県の由利本荘市、にかほ市、山形県の遊佐町、酒田市の4つの市町にあたるのですが、今回ご紹介する秋田県にかほ市の中だけでも、コンパクトな地域内で何種類もの美しい自然景観に出会えるのです。
スケールの大きな山岳風景はもちろん、高原、森林、峡谷、滝、渓流、湖沼、湧水、湿原、そして日本海沿岸部では砂浜から複雑な岩石海岸まで・・・山と海の間にある自然ならなんでも揃っていると思えるほどです。そういうわけで、私は常々、鳥海山麓を「日本の美しい自然景観の縮図」のような魅力あふれる地域として紹介しています。
山麓の自然を潤しているのは、鳥海山の雪解け水です。雪解け水で渓流や滝の水の流れの勢いが増してくる新緑の季節の美しさは格別です。湧水が豊富なため、雨の日でも川の水があまり濁らず、いつでも透明度の高い水面に出会えることも大きな魅力です。
鳥海山を背にして日本海に目を転じても、その日の天候によって日本海は様々な表情を見せてくれます。強風にあおられて岸壁に打ち寄せる波も日本海らしい光景ですが、風が穏やかな日は、岩場の内側で、鏡のような海面に空が映る海岸もあります。
鳥海山麓は私にとって、季節や場所を変えながら、何度訪れても魅力の尽きないところです。訪れる方には、ぜひ時間をかけてじっくりと山麓を巡っていただきたいと思います。きっと、様々な自然景観を目の当たりにするにつれて、この地域の自然のバリエーションの豊かさに驚かれることでしょう。
■ワンポイントフォトレッスン
にかほ市の海岸からも西空の天気がよい時には、日本海の彼方へと沈んでゆく夕日を眺めることができます。ところが、写真を撮影するとなるとなかなか難しいものです。天気がよい時に太陽を入れて写真を撮ると、太陽のあたりが真っ白に写ってしまった経験をお持ちの方は多いと思います。これは、太陽の光はあまりに強いためです。
日の入りの頃に太陽の位置が地平線に近づくと、光も弱くなり、赤味も増してくるので、少し撮影はしやすくなりますが、それでも天気がよく湿度も低い日は、日没直前まで太陽の光が非常に強いことがあります。
【写真】は、太陽は見えているものの、西空が比較的曇っている時の写真です。案外、雲が適度にかかっている方が、赤味も強く出たり、明るくなりすぎずに西日の色が濃く表現できたりするものです。
「夕日の撮影は天気がよくないといけない」と決めてしまわずに、多少は曇っていても太陽が見えているのであれば、諦めずにチャレンジしてみることをお薦めします。思いもかけず美しい色の変化に出会えるかもしれません。
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