かみやただしのおススメ芝居

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第2回
凝縮感のある二人芝居を楽しめる『ピカレスク・ホテル』が20年ぶりに復活

ホテルの一室を舞台に、男と女のあらゆるストーリーが展開される――。『ピカレスク・ホテル』は、1991年から新宿の小劇場「シアタートップス」(2009年に閉館)にて上演されたシリーズだ。最後の上演となった1994年までに、全6回の公演を成功させている。当時好評を博したこの企画が、「赤坂RED/THEATER」に場所を変え、20年ぶりに復活する。

『ピカレスク・ホテル』は、男と女の二人芝居であることが特徴だ。ホテルの一室という設定のため、当然セットは変わらず、二人が向かい合って発する言葉を中心にストーリーが進んでいく。余計なものをそぎ落とした無駄のないセリフで、観客を引き込む。もう一つ、二本立てであることも魅力のひとつ。1話が1時間弱で完結するため、見やすいのはもちろんのこと、タイプの違う二つのドラマを一度に楽しめる。

この企画は、劇団「プラチナ・ペーパーズ」主催の堤泰之氏発案によるものだ。毎回、旬な作家や勢いのある個性的な役者を起用してきた。公演を開始した90年代前半の演劇界は、役者は劇団を中心とした活動がほとんど。作家や役者を複数の劇団から集めた“プロデュース公演”は、今では小劇場の公演でも当たり前となったが、当時は新鮮な驚きを持って迎えられた。

なぜ今回、『ピカレスク・ホテル』の新作が20年ぶりに上演されることになったのか。それは、赤坂RED/THEATERの入っている建物自体がまさに“ホテル”(赤坂グランベルホテル)だということがヒントになったのだとか。公演には当初より、観客を劇場受付から座席までベルボーイが案内するというおまけの演出があり、この遊び心にもマッチする。また、「シアタートップス」が閉館になってから、劇場の作りやキャパシティーが似ているということで、多くの劇団が赤坂RED/THEATERに劇場を移したこともきっかけの一つとなった。

ホテルの密室で、どんなカップルが時を過ごし、どのような会話をしているのか。こんな大人向けの内容にふさわしく、音楽はピアノの生演奏である。ピアノ演奏を担当するのは、ジャズピアニストの小林洋氏。公演はちょうどクリスマスシーズンにあたり、贅沢な気分を味わえそうだ。さらに、小林洋氏を父親に持ち、日本ジャズヴォーカル大賞ほか数々の受賞経験のある若手ジャズ歌手の第一人者、小林桂氏のスペシャル・ジャズライブが、最終日の夜に開催される。『ピカレスク・ホテル』特別企画であり、ジャズファンならずとも、足を運んでみたいライブだ。

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