第3回
ソニー設立の物語を演劇と映像で表現したドイツ発の舞台
2012.06.19 [上谷 忠]
ドイツで誕生したユニークな舞台、『Heavenly Bento(ヘヴンリー・ベントー)』が、7月4日から青山円形劇場で上演されることになった。ベルリンを拠点に活動する演劇・パフォーマンスのアーティスト集団「post theater(ポストシアター)」の作品だ。海外で作られた舞台でありながら、テーマとなっているのは日本の企業。電子機器メーカー「ソニー」を設立した井深大と盛田昭夫(二人とも故人)が主人公だということに、多くの人の驚きと関心が集まるのではないか。
物語は、未来と天国を舞台に進んでいく。戦後、焼け野原となった東京で、電子機器業界でトップに立つこと、そして日本の再建に貢献することで、自国の誇りを取り戻したいと夢見た井深と盛田。すでにこの世から旅だった二人の男が、会社の記念日を祝うために同僚たちを晩餐会に招待し、過去を語る。壊れかかった建物で始めた町工場から、世界的なメーカーへと変貌を遂げたソニーの足跡を辿り、迫られる決断や葛藤などが描かれる。四角いシンプルなステージを取り囲むように席が設けられているので、自分も晩餐会に招かれたような感覚で観劇することになる。
登場人物は3人。井深、盛田の二人芝居に、女性ダンサーのパフォーマンスが加わる。この舞台では特に、日本ではなかなか見られない特徴的な演出に注目してほしい。ほかの演劇でも、映像をスクリーンに映してオープニングやエンディングで用いたり、あるいは背景のように使う例はよくある。しかしこの作品は、映像をステージ上に投影する。役者の足元、ステージ自体をスクリーンとして使い、優れた効果を生み出しているのだ。カタカナや漢字がイメージ的に使われたりと、視覚的に楽しめる。登場人物の動きとぴったり連動したビデオ映像は、オーディオ機器に強い“ソニーらしさ”といった意味でも一役買っている。
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