第3回
地震の後の試写会レポート
2011.05.10 [島 敏光]
3月11日(金)「八日目の蝉」の試写を見るために松竹本社3Fに向かう。
連日満席という話を聞いていたので、午後3時30分からのスタートだったが、その30分以上前に受付を済まそうとすると、近くにいた女性が「あっ、地震だ」と叫ぶ。
その直後に内蔵に響くような激しい揺れを感じる。
どこが安全な場所なのか皆目見当がつかず、ただ会場の踊り場に立ちつくす。
さらに建物全体がブランコのように大きくゆらりゆらりと揺れる。
いつまでも終わらない。
恐怖心と違和感で気持ちが悪くなってくる。
試写会のスタートまで余裕があったので、揺れが一段落してから、とりあえず外に出る。
(この時点ではまだことの重大さに気付かず、映画を見る気でいた)
交差点に人があふれている。
念のために家族に電話をするが、ケイタイもメールも一切つながらない。
すべての電車はストップしていたので、試写はあきらめ、東銀座から文京区の自宅まで1時間20分かけて歩いて帰る。
食器はメチャクチャにこわれていたが、家族にケガはない。
後日、宣伝部に「あの後は試写をやったの?」と尋ねると「上映できなかったんです。スミマセン」とあやまられる。あやまれても困る。
次の日からは、中止にならなかったいくつかのイベントの司会をこなす以外は、ぼんやりと家でテレビを見て過ごす。
悲惨な現実にただただ気が滅入る。
地震から5日後の3月16日(水)、「飯と乙女」の試写会(午後1時)に行く。
会場は渋谷の映画美学校試写室。
受付では渋谷周辺の地図が渡され、避難場所と経路の説明がある。
70席の会場に観客は9人。地震後はどの試写室もガラガラと聞く。
終映後、京橋テアトル試写室の「ダンシング・チャップリン」に向かう。
通常なら30分前に行っても席がないと言われる人気作品で、しかもこれが最後の試写会。果たして満席かガラガラか……。
約40分前に到着すると会場はまばら。
スタート時には8割の入りだった。
終了後は映写技師に誘導され、エレベーターではなく、非常階段で退場することになる。
午後6時30分から見る予定だった「アリス・クリードの失踪」は中止になっていた。
この東京の試写会でも、日常の中に様々な非日常が入り込んでいる……。
「飯と乙女」
栗村実監督の長編(75分)デビュー作。
食べることの喜びと苦しみにスポットを当てた冒険心あふれる作品だが、物語の後半がヌルい。 ☆☆☆
「ダンシング・チャップリン」
舞台と映画の融合。久々の周防正行作品。
期待は高かったが、僕には映画的な興奮は感じられない。 ☆☆☆
(☆は1~5、3つが平均)
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