第7回
タイの都で首長族に逢う
2011.07.19 [島 敏光]
魅力的なツアーの広告を目にした。
「いにしえのチェンマイと
タイ最北の都チェンライ周遊5日間」
サーチャージ込みで約90,000円というお手頃価格で
「パドゥン族(首長族)」にも会えるらしい。
現地のガイドは正直だった。
「タイには首長族はいません。
首長族がいるのはミャンマーです」
といきなりカミングアウト。
「でも、本物の首長族に会えます」
僕は思わずズルッとこける。
つまり、タイの観光のために、
ミャンマーの山岳地帯から首長族を誘致し、
タイの政府が新しく村を作り、
タイの北部に住まわせているということらしい。
そのせいか村の中に入っていっても、
アジアならではの生活のニオイがしない。
ディズニーランドのテーマパークに
足を踏み入れたような感じ。
まるで音のないチキルーム。
その一画に首長族はいた。
首にコイルのようなものを付け、民族衣装を着た女性たちが、
柔和な笑みを浮かべ、観光客を静かに迎え入れる。
ある者は糸車を回し、ある者ははたを織り、
ある者は何もせずに座っている。
特別なことはなにもしない。
ただ日がな一日そこにいる。
存在することが、彼女たちのパフォーマンスであり、仕事である。
コメント