荒野のエッセイスト(映画編)

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第9回
「一枚のハガキ」の舞台挨拶

新藤兼人監督が自ら「最後の監督作」と語る
「一枚のハガキ」の初日舞台挨拶が8月6日(土)、テアトル新宿で行われ、
僕は進行役として参加させていただくこととなった。

劇場の上手通路をパーテーションで仕切り、即席の控え室にする。
柄本明、津川雅彦、豊川悦司、倍賞美津子、大竹しのぶの順に出演者が集まる。
トヨエツは偉いっ!
ソファが用意されているにもかかわらず、
遂に最後まで一度も座らなかったぞ。
業界の先輩たちに気を使っているのだろう。

そこに今年で99歳になった新藤監督が車イスで登場。
出演者が代わる代わる監督に顔を近づけ、挨拶をしている。

午後0時40分にスタンバイが完了して、
僕は舞台に上がり、お客さんに2~3の注意事項を伝えた上で出演者を紹介。
全員が上手から登壇した後、新藤監督を紹介すると、
後方の扉が開き、車イスの監督が悠然と登場する。
会場を埋め尽くしたお客さんから割れんばかりの拍手が湧き起こる。
舞台に全員が勢揃いしたところで、監督と出演者から短い挨拶。

僕が監督に、なぜ最後にこの作品を選んだのですかと質問すると、
この映画のストーリーの説明を始めたが、
車イスを押している孫の新藤風さんに
「くどい話をするな」と言われたとボヤいて、会場をなごませた上で、
すぐに軌道修正をする。
まるで少年のような柔らか頭だ。

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