第32回
舟を編む
2013.04.09 [島 敏光]
辞書とは奇妙なものだ。
知らない言葉を調べるには最適だが、
あらゆる日本語を説明することを前提としているため、
だれもが当たり前に使っている言葉も取り上げなければならない。
そこに不条理が生まれる。
例えば「右」。
皆さんならどう説明しますか?
僕が子供の頃は
お箸を持つ方が右、
お茶碗をもつ方が左、
と教わった。
世の中ににはサウスポーの人もいるから
普遍的な事実を提供する辞書には使えない。
「舟を編む」
では、出版社の男(松田龍平)が、
「西を向いた時に北にあたる方角」
と表現していた。
これは正しいかもしれないがまどろっこしい。
今、手元にある三省堂の国語辞典では
「この本を開いたとき、偶数ページのあるほう」
とある。
ふーん、そう来たか……。
およそ「右」だけでもこれだけ厄介だ。
愛、夢、スケベなどはどう説明する?
だれでも知っている言葉を調べ
そこに使われた言葉をまた調べていくと、
袋小路に迷い込む。
例えば……。
次の言葉は何だと思いますか?
「革・ゴム・布などで作り、
胴から下に分かれてのびた長い部分の
うらのうしろをおおうものをはくときにあてて使う
竹などを細長くたいらにけずり、先のヘリをうすく作った道具」
さあ、答えは?
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