第34回
日本映画批評家大賞 インサイド・レポート
2013.06.11 [島 敏光]
可哀そうだったのは主演男優賞の松坂桃李。
この日が自分の出演している舞台の千秋楽。
打ち上げで羽目を外したいところだろうに、
ホッとする間もなく会場に向かっている。
ギリギリ間に合うか間に合わないか……。
授賞式のスタッフから選考委員に
「トロフィーを渡し終わったら
時間つなぎでたっぷりでしゃべって下さい」
という申し送りがある。
だれも選考委員の長いスピーチなど聞きたくはないだろうに……。
それでも全員が受賞者や受賞作品について
自分なりのコメントを述べ、時間をかせいでいる。
ようやく松坂桃李が登場。
当然、大先輩の受賞は終わったあと。
図らずも大トリという形になってしまった。
主演男優賞とはいえさすがに荷が重い。
いい人オーラをまき散らし、しきりに恐縮している。
それがまたさわやかで好感度アップにもつながったので、
結果オーライと言うべきか……。
ゴールデン・グローリー賞の夏八木勲。
風邪で欠席とアナウンスされたが、
この晴れの舞台に単なる風邪で欠席とは考えにくい。
何か重大な事態でなければいいがと願ったが……。
いやな予感は的中し、
その9日後の5月11日、すい臓がんのため死去、
というニュースが流れる。
授賞式には、代理でまり子婦人が出席して、
打ち上げの席にも顔を見せ、
多くの関係者との記念撮影にも応じ、
最後まで明るく気丈に振る舞っていた。
夫の死期も悟っていたはずだ。
「俳優夏八木勲をいつまでも忘れないで下さい」
おそらくそんな気持ちで夜遅くまでつきあってくれていたのだろう。
心よりご冥福をお祈りします。
フレッシュな新人たちが頭角を現し、
古い映画人が去って行く映画の交差点。
第22回日本映画批評家大賞では、
まるで映画のワンシーンのように
様々な人間ドラマが繰り広げられていた。
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