第26回
なぜ、ここで、この曲が?
2012.09.11 [島 敏光]
音楽や映画に関心を抱き続け、
今日まで生きてきた僕にしてみれば、
日々の暮らしの中で時折、
なぜ、ここで、この曲が流れるのか、
と呆気に取られることがある。
今回はそのBest3を紹介しよう。
第3位……。
とある結婚式場。
披露宴も大詰めを迎える頃、
新婦の父が進み出て、
「ここでお祝いに一曲」。
会場からはヤンヤの喝采。
選んだ曲は「ラ・ノビア」。
僕は一瞬「あれ?」と思う。
「泣きぬれて」という日本語タイトルもあるラテンの名曲だ。
父は朗々と歌い始める。
♪白く輝く花嫁衣装に
心をかくした美しいその姿
その目にあふれるひとすじの涙
私は知ってる
アヴェ・マリア
ここまではいい。
問題はサビの部分だ。
祭壇の前に立ち
いつわりの愛を誓う
十字架にくちづけして
神の許しを願う
おい、いつわりの愛を誓っちゃマズいだろ。
会場には重苦しいムードが漂う。
父はそれに気付いているのかいないのか、
それでも最後まで歌いきった。
会場からは控えめな拍手。
果たして父は何を考えていたのか、
何も考えていなかったのか、
僕には分からない。
ただ、僕は思う。
結婚披露宴に「ラ・ノビア」は止めてほしい。
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